今回は、先にupしました『AIの情報処理方法から学べる、あなたの能力を劇的に伸ばす5つの力』に次ぐ第2弾として、“子どもたちの教育”について言及することにします。そして、親御さんや教育関係者の方々への今後の指針となることを期待するところです。
◆ AIが人の代わりをする時代が現実のものとなった
昨今は、これまで人間がやっていたことをAI(artificial intelligence、人工知能)が担当できるようになってきましたので、企業ではそれによる人員削減が現実のものとして進行しています。具体例を挙げるならば、特に海外企業ではカスタマーサポートの多くがAIに置き換わり、それによる人員削減が進んでいます。このことは、“質問に答える”という、これまで学校教育が学力試験などにおいて重視してきた能力が、広くAIに代替されていくことを示しています。或いは、文章作成AIの導入により、ライターや編集スタッフを削減するメディア企業が増えています。このことは、“文章を書く”という、一見、人間らしい活動に思える仕事の多くがAIに置き換わっていくことを示しています。或いは、金融機関では、データ入力、書類チェック、定型処理などをAIに置き換えて人員削減をする事例が増えてきています。これは、そのような作業ではAIのほうが圧倒的にミスが少なくて高速であることを意味しています。
上述したのはごく一部ですが、今後はAIへの代替がさらに加速していくことと思われます。そしてこの状況は、現在の学校教育が前提としてきた「知識を覚え、正確に答える能力」が、AIの登場によって急速に価値を失いつつあることを意味しているわけです。
では、人間にしか出来ないことは一体どのようなことなのでしょうか…。それを明らかにするには、AIが得意なこと、人間が得意なことを、それぞれ見極めることです。
◆ AIに任せるべきことを見極める
AIが得意なことはAIに任せてしまうのが、最も理にかなっていると言えます。そこで、AIが得意なことを挙げてみることにします。
① 大量の情報を検索・整理・要約する
AIは、インターネットやデータベースなどに存在する膨大な情報の中から、必要な情報を短時間で探し出すことができます。また、それらの情報を整理して共通点や要点をまとめ、短い文章として要約することも得意です。人間が何時間もかけて調べる作業を、AIは数秒から数分で行うことができます。
② 膨大な知識を記憶し、瞬時に取り出す
AIは、人間とは比較にならないほど膨大な量の知識を扱うことができます。そして必要なときには、その知識を瞬時に呼び出して利用することができます。人間のように忘れることがなく、必要な情報をすぐに取り出せるという点は、AIの大きな特徴の一つです。
③ 莫大な情報から最適な答えを導き出す
AIは、過去の膨大なデータや事例をもとにして、質問に対して最も適切と思われる答えを導き出すことができます。多くの情報を比較しながら判断できるため、特定の分野では人間よりも高い精度で答えを提示できる場合もあります。
④ 圧倒的な速度で情報処理を行う
AIのもう一つの大きな特徴は、情報処理の速度です。人間が計算や分析に長い時間を必要とする作業でも、AIは非常に短い時間で処理することができます。この高速処理能力によって、大量のデータを扱う分野ではAIが大きな力を発揮します。
⑤ 既存の情報から未知の状況をシミュレーションする
AIは、過去のデータや既存の知識をもとにして、まだ起きていない状況を予測したり、シミュレーションしたりすることができます。たとえば、天気予報や交通の予測、経済の分析など、多くの分野でAIによる予測が活用され始めています。
⑥ 文章・画像・音楽・プログラムを生成する
最近のAIは、文章を書いたり、画像を作ったり、音楽を作曲したり、さらにはコンピュータプログラムを生成したりすることもできるようになってきました。これは、過去の膨大な作品やデータを学習し、そのパターンをもとに新しいものを作り出す能力によるものです。
⑦ ルールに従い、休まず働き続ける
AIは、与えられたルールに従って作業を正確に実行することができます。また、人間のように疲れたり休憩を必要としたりすることがないため、24時間継続して働くことができます。このため、単純作業や反復作業の分野ではAIが大きな力を発揮します。
◆人間の強みを見極める
【1】問いを生み出す力
何が問題なのか、何を考えるべきなのかという「問い」を生み出す力は、人間の大きな強みです。AIは質問に答えることは得意ですが、どのような問いを立てるべきかを考えることは、基本的に人間の役割です。
【2】好奇心と探究心
人間は自然や社会の出来事を見て「なぜだろう」と疑問を持ちます。こうした好奇心や探究心が、科学の発見や技術の進歩を生み出してきました。
【3】創造力と発想力
これまでにない考え方や新しい発想を生み出す力も、人間の大切な能力です。既存の知識を組み合わせて、新しいアイデアや価値を生み出すことができます。
【4】共感力と人間関係を築く力
人間は相手の気持ちを理解し、共感しながら関係を築くことができます。信頼関係を作り、協力して社会を成り立たせていく力は、人間にとって非常に重要です。
【5】価値を判断する力
何が正しいのか、何が大切なのかを考え、判断することも人間の重要な役割です。社会の中でどのように行動すべきかを選び取る力は、単なる情報処理だけでは決めることができません。
【6】経験から学ぶ力
人間は成功や失敗の経験から学び、自分の考え方や生き方を成長させていきます。こうした経験の積み重ねが、人生の知恵を形作っていきます。
◆子どもたちは何を学ぶべきなのか(ミニ漫才)
子ども:AI先生、質問があります。
AI:はい、どうぞ。
子ども:AIが何でも答えてくれるなら、ぼくたちはもう勉強しなくてもいいんですか?
AI:いいえ。それは違います。
子ども:えっ、どうして?
AI:私は「質問に答えること」は得意ですが、「何を質問するべきか」を決めることは、人間の方が得意だからです。
子ども:じゃあ、AIがある時代に一番大事な勉強って何ですか?
AI:それは「良い質問をする力」です。
子ども:でも先生、学校のテストって、質問するんじゃなくて答えるほうですよね?
AI:……それは、なかなか鋭い質問ですね。
子ども:もしかして、学校のテストはAIのほうが得意なんじゃないですか?
AI:……その可能性は、かなり高いと思います。
子ども:じゃあ僕たちは何を勉強すればいいんですか?
AI:世界を見て、「なぜだろう」と思う力です。
子ども:それってテストに出ますか?
AI:残念ながら、あまり出ません。
子ども:じゃあ先生、それが一番大事なのに、どうしてテストに出ないんですか?
AI:……それは、私より人間の先生に聞いたほうがよさそうです。
≪先生もAIを活用していた≫
先生:最近、AIを使って宿題をやる生徒が増えているそうですね。
AI:はい。そのような報告があります。
先生:困ったものです。生徒が自分で考えなくなるじゃないですか。
AI:それは教育上、重要な問題ですね。
先生:だから私は、生徒には「自分の頭で考えなさい」と言っています。
AI:素晴らしい方針だと思います。
先生:ところでAIさん、この問題の答えは分かりますか?
AI:はい。解説付きで説明できます。
先生:……ちょっと見せてもらえますか?
AI:もちろんです。
先生:なるほど。じゃあ明日の授業は、この説明でいきます。
◆子どもたちは何を学ぶべきなのか(本文)
ここまで見てきましたように、AIは大量の情報を処理し、答えを導き出すことにおいて人間を大きく上回る能力を持つようになってきました。しかもその能力は、今後ますます向上していくことが予想されています。そのような時代において、子どもたちの教育はどのように変わるべきなのでしょうか…。
まず第一に言えることは、“AIと同じことを人間が一生懸命に学ぶ必要はない”ということです。暗記によって知識を増やし、決められた問題に正確に答える能力は、すでにAIが最も得意とする分野になりつつあります。もちろん、基礎的な知識を身につけることは大切です。しかし、それはあくまでも“考えるための材料”であり、教育の最終的な目的ではありません。むしろ、これからの教育で重要になるのは、人間にしかできない能力を育てることです。
たとえば、自然や社会の出来事に対して「なぜだろう」と疑問を持つ力です。科学の歴史を振り返れば、多くの発見はこうした素朴な疑問から始まっています。
また、既存の知識を組み合わせて新しい発想を生み出す力も重要です。AIは過去のデータをもとに答えを導き出すことは得意ですが、まったく新しい価値観や視点を生み出すことは、依然として人間の大きな役割として残されています。
さらに、人と人との関係を築く力も、これからの社会ではますます重要になるでしょう。社会は多くの人の協力によって成り立っています。互いの立場や気持ちを理解しながら協力する力は、AIが簡単に代替できるものではありません。
そしてもう一つ大切なのは、失敗や経験から学ぶ力です。人間は成功だけでなく、失敗からも多くのことを学びます。こうした経験の積み重ねが、判断力や知恵を育てていきます。つまり、AIの時代において子どもたちが学ぶべきことは、単なる知識の量ではなく、「世界を理解しようとする力」と「新しい価値を生み出す力」なのです。
◆まとめ
AIは非常に強力な道具ですが、それをどのように使うかを決めるのは人間です。だからこそ、子どもたちにはAIを上手に使いこなす人間になってほしいと思います。AIの時代が進めば進むほど、人間の教育の本当の目的は、よりはっきりしてくるのではないでしょうか。要するに、これからの社会では、「答えを覚えている人」よりも「問いを作れる人」が価値を持つようになるわけです。
なお、AI時代の教育については、今後も続編として考察していく予定です。
