必ず入れたい10種類の食材

必ず入れたい10種類の食材

 基本となる食事が理想的なものであれば、前回に紹介しましたサプリメントの種類や量を減らすことが可能になります。「できるだけサプリメントに頼りたくない」と思う人は決して少なくありませんので、そのようなご要望に答えられるように、絶対に欠かせないと考えられる10種類の食材を選んでみました。もちろん、美味しさを求めて育種された現代の食材に含まれる栄養素やファイトケミカルなどの機能性成分の含有量は昔とは異なりますし、海洋汚染が進んでいることから充分に食べることにリスクを伴うものもありますので、あくまで理想に〝近い〟食事のための食材であると、お考えいただければと思います。

 結論的には、掲載した図(高画質PDFはこちら)に示した通りなのですが、補足も兼ねて順に紹介していこうと思います。なお、後から見てみると「こやぎにはふかきかち(子ヤギには深き価値)」という語呂合わせが成立しましたので、料理の時の食材確認に使って頂ければと思います。
 では、先ずは〝穀物〟「こ」についてです。穀物という単語は、狭義ではイネ科の種子のことを指します。そして、広義にはマメ科の種子も含むということになっています。
 農耕は人類にとって画期的な発明であり、それによって地球上において住める範囲が大幅に広がりました。そして、その歴史は1万年ほど前まで遡れるとされています。それぐらいの期間が有ると、遺伝子のレベルでの適応が可能になり、デンプンを分解するためのアミラーゼ遺伝子が増幅されることになりました。従いまして、ヒトとお猿さんは、アミラーゼの面では大きく異なってしまったことになります。
 デンプンを食べることに遺伝子レベルでも適応し、ヒトはもはや穀物への依存度を非常に高めてしまったため、これを食べないことはかえって不自然である、という感じになってしまいました。
 では、穀物をどのように食べるべきなのかと言えば、これを主食とするのであれば、含まれている栄養素や機能性成分の全てを戴くことが理想だということになります。そして、そのためには、精製の度合いをなるべく少なくすることが重要になります。米であれば、玄米を食べることによって、白米には無い貴重かつ重要な栄養素を摂ることが可能になります。
 また、デンプンの分子構造を変化させて消化しやすくするために加熱調理するのが普通ですが、その後に冷やしてやるとデンプンの高次構造が変化してレジスタントスターチ(難消化性デンプン)に変化します。図の最上段に書き入れましたが、私たちが食事をする目的の5割は自分のため、残りの5割は腸内細菌のためです。私たちは腸内細菌との共生によって生かされていますから、自分のためだけに軟らかい白米ごはんを食べていると、そのうち大切な腸内細菌を失うことになり、病院に行って対症療法の薬をもらって更に健康を害する結果となるわけです。
 米だけでなく、穀物には様々な種類がありますから、それを混ぜて食べるなどすれば更に健康効果が高まると考えられます。

 2番目は〝野菜〟「や」です。〝野菜〟という語の内訳としましては、葉茎菜類、根菜類、果菜類、香辛野菜、果実的野菜となっています。典型的な果物や、前述の穀物や、海藻などを除いた〝植物性食材〟に該当することになります。
 農耕が始まる前の、狩猟採集が主であった時代から現在まで、野山に生える植物や、人為的に栽培が始められた食用植物は、穀物だけでは補いきれない栄養素の貴重な供給源になっています。例えば、ビタミンCをはじめとした各種ビタミン類、MgやKをはじめとしたミネラル類、水溶性や不溶性の食物繊維、数々のファイトケミカルを得ることができますので、それによって病気を防いだり治したりすることが可能になります。
 また、可能であれば硬い部分も捨てずに食べ、即ち「丸ごと戴く」ことが、野菜の恩恵を多く受けるための基本になります。更に、虫に喰われた植物はファイトケミカルの濃度を高めていますから有効性が高くなりますし、良質な土であるならば少々付いたまま食べることによって土壌細菌を摂取することになり、それが腸内で善玉菌として定着して働いてくれることになります。
 少なくとも、野菜抜きの食事はありえないわけで、もし抜いてしまうと、様々な病気に悩まされることになります。昔の北極圏の人々はアザラシなどの動物だけを食べる完全なる動物食でしたが、アザラシは餌としてプランクトンや海藻を食べている魚を食べていましたので、アザラシの内臓ごと食べればプランクトンや海藻を食べたことになっていました。ただ、あまり長寿ではなかったことから、やはり完全動物食には無理があったのだと考えられます。

 3番目は〝魚介類〟「ぎ」です。これに該当するのは、魚、貝、エビ・カニ、イカ・タコなどです。日本は島国ですから平均的には海が近いわけで、太古より魚介類を多く食べてきました。たとえば貝は、貝殻が腐り難いものですから、全国各地に貝塚が出来ました。
 魚介類をまとめて栄養学的な特徴を述べるならば、多く含まれているのはDHA・EPA、タウリン、亜鉛、アスタキサンチン、ビタミンB12などで、これらは植物食では得られない貴重な栄養素です。世の中には完璧なる植物食主義者がいらっしゃいますが、上記のようなものをサプリメントで補わない限り、健康長寿は実現できません。
 魚介類を食べる場合の注意点としましては、マグロなどの大型の魚は有機水銀などを生物濃縮によって体内に高濃度に蓄積していますから、多く食べることは控えたほうが良いと言えます。逆に言えば、小型の魚介類を食べるようにしたい、ということになります。

 4番目は〝肉類〟「に」です。健康食材として肉を外す一群の人がいらっしゃいますが、私は外しません。ただ、肉としては、いわゆるジビエが良いと言えます。それは、人為的な飼育による数々の弊害をあまり受けていないことと、増え過ぎたからといって処分されてしまった命を無駄にしないようにしたいからです。
 そもそも、ヒトは狩猟採集時代からシカやイノシシなどの肉を食べてきました。また、植物食が主である猿達も、たまに肉を食べています。結局、類人猿は雑食であるものが多いわけで、動物性のものを完全に無くしてしまうと健康を保ち難いのだと考えられます。
 その理由は、肉には次のような成分が多く含まれているからであり、即ち、イミダゾールジペプチド(カルノシン、アンセリンなど)、組成バランスの良いアミノ酸群、カルニチン、タウリン、アラキドン酸、鉄や亜鉛、ビタミンB群などです。
 魚介類も動物の仲間ですから同様の栄養素が含まれているわけですが、あまり多く食べられない場合には哺乳類や鶏の肉によって、足りない分を補充することが有効であると考えられるわけです。

 5番目は〝発酵食品〟「は」です。納豆、味噌、醤油などが主なところです。これらは特に、微生物の菌体や、微生物の代謝産物が効果を発揮することになります。例えば、納豆にはポリアミンが特に多く含まれていますので、抗老化を狙うならば、絶対に外すことができない食材になります。

 6番目は〝フルーツ(果物)〟「ふ」です。フルーツは、他の動物に食べてもらえるように目立つ色に変化したり、味を美味しくしたりなどの進化を遂げてきた植物体の一部分です。そして、内部に在る種子を守るために、抗酸化力や抗菌力を高めていますので、その色素成分や抗酸化・抗菌成分が、ヒトに対しても有効な生理活性をもたらしてくれます。これも、美味しいからというのではなく、健康維持・増進のために適当量を食べることが重要です。

 7番目は〝海藻〟「か」です。海藻ならではの多糖類(フコイダン、カラギーナン)や、フコキサンチンなどのカロテノイド、MgやCaなどの多量ミネラル、ヨウ素をはじめとした種々の微量ミネラルの貴重な摂取源になりますから、これを摂ることは重要です。

 8番目は〝キノコ〟「き」です。β-グルカンなどの細胞壁多糖類は、免疫系の強化や、がん予防にとって有効です。或いは、エルゴステロールはプロビタミンD2として貴重です。或いは、椎茸エキスはカルバミル化による老化を防ぐために有効です。

 9番目は〝粕類〟「か」です。具体的には、酒粕や、おからが非常に有効です。そもそも、粕(かす)は不溶性であり、食物繊維やレジスタントプロテインが多く含まれますので、大腸内の腸内細菌の育成や、腸内細菌による分解にて腸管内にてアルギニンを得るための貴重な方法になります。

 10番目は〝茶〟「ち」です。緑茶、ドクダミ茶、タンポポ茶、ウコン茶など、様々なお茶がありますが、それぞれに貴重な有効成分(例:EGCG、ケルセチン、アピゲニン、クルクミンなど)が含まれていますので、最も身近な良薬であり、感染症、生活習慣病、がんなど、様々な疾患を予防したり回復に導いたりしますので、これも非常に重要です。

 以上、記事が少々長くなりましたが、「必ず入れたい10種類の食材」=「子ヤギには深き価値」の紹介とさせていただきます。なお、それぞれの食材の詳細や、それに含まれる成分の特徴につきましては、既に記事としてupしているものが多いのですが、まだのものにつきましては機会を改めて紹介させていただきます。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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