「仕事が捗(はかど)らない」「勉強が捗らない」「頭の回転が速まらない」「手先の器用さが無くなった」などを解決するための著効かつ手軽な方法がありますので、それを紹介しようと思います。
先に結論を言いますが、〝滝の音〟や〝雨の音〟のような自然界が発するノイズ(雑音、雑振動)を全身に浴びながら活動することです。或いは、効果は少し落ちますが、旧型のFMラジオなどで放送局の周波数に合わせていない時に発せられるシャーという〝ホワイトノイズ〟を浴びることです。
これらのノイズの特徴は、種々雑多な周波数の音(または振動)で構成されていて、その出方や大きさ、変化の仕方がランダム(不規則)であることです。イメージとしては、掲載した図(高画質PDFはこちら)の右側中段(「ノイズ」)のようなものです。
例えば、周波数に着目するならば、耳には聞こえない低周波成分が含まれていたリ、耳には聞こえない高周波成分が含まれていたりします。なお、FMラジオのホワイトノイズは、機器が低音を再生できなかったり超高周波音を再生できなかったりするものでは可聴領域だけの周波数になりますから、効果は半減することになります。
或いは、特定の周波数成分に着目するならば、その周波数の音が再び出るのか否か、出た時にその大きさはどうなのかについては、全くランダムであって誰にも予測できません。
更に、実際には様々な周波数の成分が出鱈目に重なり合っていますから、波形を見た場合に同じパターンが繰り返される確率は限りなくゼロに近いと言えます。
換言するならば、全てのものがランダムである度合いが高いノイズほど、脳や神経系の能力を高める効果が高くなる、ということになります。従いまして、逆に、機械から出る騒音などのように特定の周波成分だけが規則的に変化を繰り返すようなノイズは、脳や神経系の活動を邪魔することになります。
では、なぜそのような現象が起こるのかについて見てみることにしましょう。掲載した図中に文章化しておきましたが、そもそも神経というものは、多数の神経細胞(ニューロン)がリレー形式で信号を伝達していく仕組みになっています。また、1個の神経細胞には複数の樹状突起と複数の軸索末端が備わっています。そして、複数の樹状突起からそれぞれ入力された刺激の合計が一定の強さ(閾値)に達すると、神経細胞は興奮して発火し(電位依存性のナトリウムチャネルが開き、それによってナトリウムイオンが神経細胞内に多量に入ってきて膜電位がプラス側に転じ)、その電気的変化が信号として下流の神経細胞へと伝わっていくことになります。
ところが、上流に相当する神経細胞からの刺激が弱い場合、刺激によって開くタイプのナトリウムイオンチャネルから少量のナトリウムイオンが入ってくるので、少しは膜電位がプラス側に変化するのですが、その変化は小さいため閾値に達しません。閾値に達しないと、電位依存性のナトリウムチャネルが開きませんので、大量のナトリウムイオンの流入には至らず、膜電位は何事も無かったようにマイナス側に戻っていきます。これは即ち、その刺激が下流の神経細胞にまで伝わらないことを意味します。このような場合は即ち、「仕事が捗(はかど)らない」「勉強が捗らない」「頭の回転が速まらない」「手先の器用さが無くなった」などの現象を来すことになります。
では、上記のように刺激が少ない場合にどうすれば解決するのか…。それは、いわば〝下駄(ゲタ)を履かせて全体を持ち上げる〟ことをすれば解決することになります。図の右側に示しましたように、〝弱い刺激〟が入ってきている状態のところに、〝ノイズ〟を追加してやります。追加した場合のイメージが下段の図です。弱い刺激によって少しは高められた膜電位に、ノイズが下駄のように下から持ち上げてくれますので、膜電位が赤線で示された閾値のレベルを超えるまで高まるようになります。この現象は〝確率共鳴〟と呼ばれています。なお、分子レベルで見てみるならば、神経細胞内のナトリウムイオンの数がノイズ入力によって増し、膜電位が閾値を超えるようになる、ということです。
仮に、そのノイズが機械の騒音のような規則的なものであったとしましょう。騒音自体が小さければ問題は起こらないでしょうが、騒音が大きかった場合、神経細胞に本来入ってくるであろう刺激とは異なったタイミングで騒音の刺激が入ることになります。そして、その騒音のみの刺激によって膜電位が閾値に達してしまい、下流の神経細胞に信号が流されることになります。即ち、全く関係の無い信号が流れ、脳や神経系を混乱させてしまうことになる、というわけです。
大きな滝の側に行って仕事をすれば、かなり捗ること間違いなしです。また、雨が降ってくれば、雨音がよく聞こえる場所で仕事をすれば良いでしょう。或いは、滝の音なども当研究室で提供していますので、出来るだけ高性能な機器にて再生しながら、仕事や勉強をしてみてください。