ワーキングメモリを増やす方法

Composite of businessman thinking and imagery

 前回は「記憶力を高める方法」について考えてみましたが、今回は「ワーキングメモリを増やす方法」について考えてみたいと思います。

 「物忘れ」というのは、一般的には、ある一つの事柄の詳細を忘れるのではなくて、「あ、サイフが無い。。どこに入れたんだろう??」とか、「自分は何をするためにこの部屋に来たんだろう?」とか、買い物に行ったとき「あと、他にも何か買おうと思ってたんだけど、何だったかなぁ?」とか、「しまった…、ガスコンロで湯を涌かしてるのを忘れてた(ノ゜⊿゜)ノ」とか、そのような日常的な、たわいもない事を忘れてしまうことのほうが多いのではないでしょうか。

 そもそも、生きていると、色んなことが周りで起きたり、しなければならないことがいっぱいあったりして、大変ですよね。考える対象が一つなら忘れないのでしょうが、沢山あると自分の中で優先順位の低いものから忘れていきます。これは、正常な脳機能だと言うことができます。なぜなら、ニューロンの数やシナプスの数は有限だからです。

 自分の頭の中に、複数のことを、その作業が終わるまで記憶しておくこと、それが作業記憶と呼ばれるものであって、英語では「ワーキングメモリ」と呼ばれます。覚えておくべき事柄の内容にもよりますが、3つぐらいまでなら覚えておける、というのが標準的だそうです。

 仕事で、今日は、あれと、あれと、あれと、あれをしなければならないとなると、4つですから、どれか一つをすっかり忘れてしまっても、べつに異常ではないということになります。従って、今日しなければならないことが5つあるとすると、紙切れにでもメモして、終わったものから順番に消していく、という方法をとっている人も多いのではないでしょうか。

 ところで、このワーキングメモリの容量を増やす、すなわち、一度に覚えておける事柄の数を増やすことが出来れば、作業が楽になる場合があります。例えば、サイフはカバンの右隅に入れていて、スマホを取りにこの部屋に来て、今日買う予定のものはこの4つであって、まだ湯を沸かし中だ…と、全部しっかりと覚えていれば、忘れて悔やむことは無くなります。或いは、本を読んでいるときに、「あれ? これ何だったかなぁ?」と、前ページに戻って読み返す頻度が少なくなります。コンピューターのメモリ(ランダム・アクセス・メモリ)の容量が大きければ、ハードディスク(HDDやDDR)を読みに行く頻度が減って、全体の処理速度を速めることが出来ます。同様に、ワーキングメモリを増やすことが出来たら、あなたの処理能力が向上することになります。

 仕事上、もっともっと沢山のことを同時に記憶して、それらを系統立てて処理しなければならない場合もあると思います。逆に言えば、そのような能力の高い人が、よく仕事が出来る人だ、などといわれているのでしょう。また、より多くの過去の記憶と、より多くの新しい記憶を組み合わせることができれば、今までに無かった新しい概念を作り出しやすくなりますから、創造性の高い仕事をする場合にもワーキングメモリが大きい方が有利になります。すなわち、ワーキングメモリの大きい人は、独創的で創造的な仕事をする能力も高いということになります。

 では、このワーキングメモリの容量を増やす方法を簡潔に紹介していきましょう。

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<ワーキングメモリーを増やす方法>

1.記憶しておきたいことは、イメージ化、すなわち映像化する。

 これは、一般的な記憶力を高める方法でも重視していることです。サイフが入っているカバンの光景を、もう一度、頭の中に描いてみることです。ほんの一瞬で結構です。或いは、部屋にスマホが置いてある光景を、他の場所に移動したときに、もう一度、頭の中に描いてみることです。或いは、買うべき物の全ての姿を、もう一度、頭の中に描いてみることです。映像の記憶容量はかなり大きいですから、それを有効利用する習慣をつければよい、ということになります。同様に、文章を読んだり、人の話を聞いたりしているとき、音楽を聴いているときなども、頭の中にイメージを作り出す癖を付けることだということになります。

2.日頃から同時に記憶するものの数を増やすように努める。

 失敗の許されない仕事をするときにメモをとることは仕方ないとして、基本的にはメモをとらず、メモに頼ることなく、自分の脳に刻み込む癖を付けることが有効です。やはり、ワーキングメモリも使わなければ廃用性の退化をしていくことになります。例えば、電車に乗っていて中吊り広告を見たならば、さーっと目を通し、そこから目を離してから、書いてあった内容の4つ以上を思い出してみるとか、書いてあった単語の4つ以上を思い出してみるとか、そのような練習をすることが有効になります。

3.解決するまでに時間を要する複雑な課題を行う。

 更に意欲のある人ならば、少し複雑な試験問題を解いてみたり、ちょっとややこしそうな課題の解決策を考えたり、ブログやFacebookにて少し高度で長めの文章を作ったりすることが有効です。なぜなら、これらの作業をこなすためには比較的多くの知識や記憶を必要とし、文章を書いているときには前の文章に書いた内容を記憶していなければ、それに続く適切な文章を作成することができません。そして、その作業が完了するまでにそれなりの時間を要しますから、ワーキングメモリを増やす効果が高まります。

4.マルチ・タスクを行ってみる。

 失敗を恐れないならば、マルチ・タスク、すなわち複数の仕事を同時に並行して行ってみることです。ただし、本当に仕事の能率を上げるには、一つのタスクに集中して、その仕事に多くのワーキングメモリを使うことが理想でしょうから、マルチ・タスクを勧められる職種は限られるでしょう。しかし、もし可能であれば、マルチ・タスクを意識的にやってみるのも有効だということになります。例えば、何かの文章を作成しながら、チームメンバーの進捗を確認して仕事の同調を促す、などです。コンピューターのマルチタスク機能に相当しますから、それが完璧に出来るということは、かなり能力が高いことになります。日常的には、ガスコンロでお湯を沸かしながら、洗濯物を畳み、テレビでニュースを見る、というのもマルチタスクになります。しかし、失敗すると、ヤカンが空焚きになるということになるかもしれませんが…。まぁ、低リスクの対象を選んで練習してみましょう。

 
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