今回からは、具体的な部位ごとの〝がん対策〟について見ていこうと思うのですが、先ずは最も死亡者数が多いとされている肺がんについて見ていくことにします。
掲載しました図(高画質PDFはこちら)の左上のグラフは、男性の場合の、がんの部位別の死亡者数(縦軸は人口10万人当たりの死亡者数)の推移(横軸は西暦)が示されたものです。
2022年が最新のデータになっているのですが、最も死亡者数の多いのは〝肺がん〟です。また、女性の場合は左下のグラフに示されているのですが、肺がんは大腸がんに次いで2番目になっています。性別によって比較的大きな差になっていることも肺がんの特徴だと言えるでしょう。
なお、このデータは高齢者人口増加の影響を打ち消すための年齢補正が行われていませんので、年齢補正を行うと、肺がん全体の死亡者数の推移は既にピークを過ぎたことになります。言い方を変えるならば、肺がんは高齢になると急に罹患率が高まることも特徴の一つだということです。
肺がんの種類につきましては、一般的に何通りかの分類方法があり、掲載した図の左側中段付近に円グラフがあって、一目で解るように工夫されています。最も多いのが〝腺がん(肺腺がん)〟で、全肺がんの約60%を占めています。なお、これは〝非小細胞がん〟であり、〝非扁平上皮がん〟に分類されています。
特に注目すべきことは、肺腺がんは今も増え続けていることです。そして、このがんは喫煙(タバコ)との関係はあまり大きくはありませんので、喫煙率がかなり低下してきた今後においても減っていかない可能性があるわけです。なお、肺腺がんの特徴や原因などについては、別記事として紹介することとし、多くの場合に命が奪われる原因になっている事を紹介しようと思います。
先に、肺がんによる死亡者数が増えている…、というグラフを見て頂きましたが、この死亡者は純粋に肺がんが原因で死亡したとは言えない、ということを再確認して頂くことにします。そうしないと、過剰に「肺がんは怖い」「肺腺がんは怖い」と思ってしまい、藁にもすがる思いで危険な治療を受けることになってしまうからです。そうなると、少なくとも私がこれまでに幾つかupしてきました記事も、あまり無意が無くなってきます。
実際のところ、「がんよりも怖いがん治療」というフレーズを使った人がいらっしゃいますが、まさに真実を物語っています。グラフで見て頂きました、肺がんによる死亡者数の中には、肺がん治療が原因で亡くなっていかれた方が何割かを占めています。その割合は、肺がんが発覚してから放置された方の例が少ないですから、統計的なデータとしては上がってきていません。
ただ、末期(ステージⅣ)だと言われて病院を抜け出し、これからは大自然に帰って自分の好きなことをして生きようと思って実行された方の末期肺がんが消えてしまった、という例が何件もあります。もし、その方が引き続き病院での治療を続けていれば、やがて「肺がんによる死亡者」にカウントされて、死亡者グラフに反映されることになります。
このような事を書いていくと、「患者さんから適切な治療を受ける機会を奪ってしまう」と、反論してくる団体さんが現れそうなのですが、私は根拠の無いことは書きませんので、遠慮なく反論してくださって結構です。
さて、絶対に忘れてはならないことを採り上げておきます。それは、ノーベル賞受賞でも話題になりました〝免疫チェックポイント阻害薬〟の〝オプジーボ〟で、これは商品名であって、正式な医薬品名は〝ニボルマブ(Nivolumab)〟のことです。2017年頃の出来事なので、今(2025年)から8年前のことなのですが、世間を大いに騒がせ、多くの人の落胆と憤りを招いた事実が発覚しました。掲載した図の右上に、その時のグラフのみを引用させていただきました。
即ち、ニボルマブが厚生労働省から承認を得た際に用いられた臨床データは、ニボルマブが従来の抗がん剤よりも延命効果があるというものでした。しかし、その後に追試された結果、その右のようなデータが得られました。また、その原論文のデータを、掲載した図の下段中央に引用しました。もちろん、中身は同じものです。
これによると、ニボルマブを投与された患者さんは、一般的な抗がん剤を投与された患者さんよりも長生きできない(早く亡くなる)ことが明らかになりました。なお、このグラフは患者さんの病状の如何に関わらず、単に生存期間がカウントされた結果です。
次に、その右のグラフは、〝無増悪生存期間〟と呼ばれるもので、要するに〝病状の進行が無かった患者の割合〟がカウントされたものです。従いまして、グラフが急降下しているほど、病状の進行が早かったことを意味しています。そして、ニボルマブを投与した患者さんは、その多くが病状を速く悪化させてしまうことが明らかになりました。
結局、この論文では、「ニボルマブは既存の抗がん剤よりも優れていない」と結論付けています。ところが、厚生労働省は、承認後にどのようなデータが出されても、承認を取り消さない方針を貫いています。それどころか、ニボルマブを使えるがんの種類をどんどん増やしています。これが日本という国のやり方です。そして、その犠牲になるのが国民の皆様です。
肺がんの場合、図の上段中央付近に、がんの進行程度と治療法の概略を引用しました。「局所進行期」で既に免疫チェックポイント阻害薬が使われるのが一般的であり、その代表がニボルマブです。即ち、肺がん(非小細胞肺がん)が発覚した多くの患者さんがニボルマブを投与され、一般的な抗がん剤以上の健康被害を受け、一般的な抗がん剤使用時よりも早く亡くなられていくわけです。最初に見て頂いた死亡者数のグラフの死亡者にカウントされていた人のうち、多くは免疫チェックポイント阻害薬による死亡であると捉えて結構であると思われます。抗がん剤よりも毒性が強いのですから、早く亡くなって当然でしょう。
ニボルマブの騒ぎから8年も経つと、当時のことを知らない人や、忘れてしまった人もいることでしょう。また、紹介しました原論文のデータは、敢えて探しに行かなければ見えてきません。もちろん、医師も患者さんに提示はしません。その結果「肺腺がんよりも怖いニボルマブ」ということになるわけです。くれぐれも、充分にご注意ください。