図(高画質PDFはこちら)の左側に示した写真は食餌の一例です。美味しそうなものばかりですが、他に栄養補助食品(サプリメント)を摂らない前提でお話を進めて行きたいと思います。
先ずは、これらの全部を1日で食べてしまった場合でも、何が不足することになるのかについて見ていきましょう。写真の右側に「足りない栄養素」を挙げてみましたが、特に子どもの場合に大きな影響を及ぼすと考えられるものから順に並べてみました。
1番目はDHA(ドコサヘキサエン酸)です。なお、DHAの概略や必要性につきましては『特にニューロンにとってDHAは極めて必須の脂肪酸』にて述べていますので、必要に応じてご参照ください。因みに、DHAは赤ちゃん用の粉ミルクにも漏れなく配合されている大変重要な脂肪酸であって、これが不足するとニューロンの軸索の形成、即ち神経回路の増築に支障を来すようになります。従いまして、離乳期以降は必ず別途補給することが望まれる脂肪酸です。
そして、図に挙げた食餌にはDHAを多く含んでいる魚が見当たりません。鶏の雛になるための卵黄には少量が含まれていますが、鶏の脳は非常に小さいため少量でも結構なのです。しかもラーメンに卵黄の半分が乗せられているだけですので、これだけでは何の足しにもなりません。
2番目は、体内において数パーセントから十数パーセントの変換率にてDHAへと生合成される場合の原材料になるα-リノレン酸です。植物の種類によって含有量は様々ですが、含有する油の約半分を占めているほど多く含まれているのは〝えごま油〟や〝亜麻仁油〟です。他の種類の油にはリノール酸が多く含まれていて、α-リノレン酸の含有量は非常に少ないか、無いに等しいぐらいしか含まれていません。従いまして、前述のDHAが含まれておらず、α-リノレン酸も別途補給されない場合、子どもたちは完璧なDHA不足に陥り、脳の発達に支障を来すことになります。
このα-リノレン酸の概略や必要性につきましては『必須脂肪酸の摂取比率は理想的になっていますか?』にて述べていますので、必要に応じてご参照ください。なお、重要な点を一つだけ述べておきますと、写真に挙げた食餌の怖いところは、特にファストフード(ファーストフード)である下段の写真のような食べ物に見られる、〝リノール酸過多〟です。リノール酸過多による弊害の詳細につきましては『油物はリノール酸過多によって病気を作る』をご覧ください。結論的に言うならば、リノール酸とα-リノレン酸は、両者の含有比率のバランスを保った状態で摂取しなければ、その比率が体内における炎症反応の強度や進行を左右するということです。そして、リノール酸過多の場合はアレルギーや種々の炎症が起こりやすくなり、抑えが効かない状態になります。
3番目は、食物繊維が足りないことです。白米ご飯の写真が載っていますが、これが玄米ご飯であったり、パンの材料が全粒粉であったりすれば少しはマシになるといったところです。うどん、ラーメン、ピザの原材料は精製された小麦粉ですから、デンプンばかりで繊維質は殆ど含まれていません。肉、ハンバーグ、揚げ物にも繊維質は含まれていません。飾りつけ程度に緑色の野菜やトマトが添えられていますが、やはり飾り程度であって、この程度ではほどんど意味がありません。
食物繊維が殆ど含まれていませんので、大腸内に生息するはずの酪酸産生菌の餌が無い状態になり、その数が激減することになります。その結果、免疫系が正しく構築されず、これによってもアレルギーや種々の炎症が起こりやすい体質になります。また、大腸内壁粘膜のエネルギー源である酪酸などの短鎖脂肪酸の供給量が少なくなりますので、大腸の機能が低下することになります。なお、これの詳細につきましては『大腸の粘膜細胞は腸内細菌がくれた酪酸をエネルギー源にしている』をご覧ください。
4番目は、ビタミン、特にビタミンC、D、Eが不足することです。ビタミンCの重要ポイントにつきましては『ビタミンCの補給を忘れてはならない』にて述べていますので、必要に応じてご参照ください。
ビタミンDは、日光中の紫外線によって作られますが、特に冬場は紫外線不足になりますので、その前駆物質を補充する意味で魚やキノコ類を摂ることが望ましくなります。
ビタミンEは、AやCと共存することで相乗効果が発揮されますので、植物、藻類、魚などを摂ることによって最小限を補うことが可能になります。えごま油や亜麻仁油にも多く含まれていますので、やはりそれらを補給することが大切です。
5番目は、マグネシウムです。マグネシウムの重要ポイントにつきましては『普通に食べているだけではMg欠乏症になる可能性が高い』にて述べていますので、必要に応じてご参照ください。子どもの場合にもマグネシウム不足は殆どの体調不良の原因になります。また、時代が進むことによって急増した熱中症の主原因も、マグネシウム不足だと考えられます。昔のように、一般的な食塩にマグネシウムが含まれることはありません。苦いものは完璧に取り除くという、現代における美味しさの追求、マグネシウム不足という重大な弊害をもたらしたわけです。
6番目は、ファイトケミカルの不足です。子どもと云えども、食品中に存在していて当たり前の機能性成分を摂取しなければ、元気溌剌(はつらつ)にはなりません。少なくとも緑茶は沢山飲むようにしてほしいと思います。『海外で注目を浴びる緑茶の圧倒的な抗ウイルス作用』にて述べましたように、ウイルス対策としても最も有効な方法になります。
7番目は、各種の微量ミネラルです。これの重要性につきましては『私たちにとって必須ミネラルとは海水中の全ての元素である』にて述べていますので、必要に応じてご参照ください。殆どのものが精製される時代になりましたので、こんなことになってしまったわけです。体調不良の原因の一つがこれによるものですから、充分に配慮していただく必要があります。
一方、図の右端に「過剰な栄養素」を挙げておきましたが、要はバランスの問題であって、これらは不必要なものではなく必要なものです。しかし、他のものとのバランスが崩れることによって、片方で摂取不足になるもを生じさせることになるわけです。できれば、未精製のものを丸ごと戴くように心掛けるべきでしょう。そして、現代においては、どうしてもサプリメントを利用しなければ補給できないものもありますので、適宜ご判断いただければと思います。
以上のように、美味しそうなものを何気なく食べ続けていることが、子どもや大人に見られる様々なトラブルの原因になっていることを、改めて確認していただければと思います。