クルクミンから生じるテトラヒドロクルクミンの抗がん作用

クルクミンの代謝産物であるテトラヒドロクルクミンの抗がん作用

 これまでに、抗がん作用を示す物質について幾つかを紹介してきましたが、今回紹介するクルクミンおよびその代謝産物の一つである〝テトラヒドロクルクミン〟を、有効な抗がん物質の一つとして加えていただければと思います。「随分と色々あるなぁ…。一体どれが一番効くのだ?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか…。
 私たちは、小学生の頃から西洋式の〝科学〟の影響を強く受けています。物事を細かく分けていって、どれが根本的な原因なのか、どれが一番大切なのかを追及するクセが付いてしまっています。そして、何でもかんでもランキングしてしまう人もいらっしゃいます。もちろん、この思考パターンは非常に大切だと思われますが、これによって生み出されているものの一つが西洋薬です。天然物の中から最も効きそうな成分のみを単離することから歴史が始まり、現代においては進歩した化学の知識と技術によって分子構造を人為的に変更し、更に効果を高めるようにデザインされます。対象療法に用いる薬としては、このほうが素早く効果が出ますから、それが大きなメリットでしょう。しかし、大抵は何らかの代謝酵素を阻害したり、特定の受容体に結合して機能を変化させるものであったりなど、ターゲットが一点集中ですから、それ以外のものとのバランスを崩してしまうことになります。従いまして、西洋薬はあくまで対症療法に用いるものであって、少なくとも健康増進のために用いるものではありません。この記事を読んで頂いている方々は意識が高いですが、世間では血圧を下げる薬、血糖値を下げる薬、中性脂肪やコレステロールの数値を下げる薬など、かかりつけの医師に勧められて飲んいる方が非常に多くいらっしゃいます。しかし、そんな薬で健康度が高まるはずがありません。また、西洋薬である一般の抗がん剤は、毒によってがん細胞を死滅させようとするものであり、実際には他の細胞のほうが大きなダメージを喰らうことになって、健康度は一気に悪化することになります。
 一方、これまでに紹介した抗がん作用を示す物質や、今回紹介するテトラヒドロクルクミンも、その作用機序が非常に多岐にわたっていることが大きな特徴です。そして、これを摂取することによって健康度が高まることが二つ目の大きな特徴です。従いまして、一般的な抗がん剤とは比べ物にならない、非常に優れた物質だということになります。
 抗がん作用を示す各種のファイトケミカル(植物由来の物質)において、複数の成分を摂ることについては次のように考えられます。それは、単一の成分を多く摂ることよりも、何種類もの成分を組み合わせたほうが相乗効果が発揮されますし、いわゆる副作用的な現象も起き難くなると考えられるからです。生薬や、それを組み合わせて作られた漢方薬のイメージに近いと言えます。従いまして、クルクミンは1~2週間に一度ぐらいはカレーを食べることによって摂取する、という具合に考えていただければ結構だと思います。

 では、クルクミンおよびテトラヒドロクルクミンの話に移ります。抗がん作用の強いのはテトラヒドロクルクミンのほうで、その前駆物質がクルクミンになります。クルクミンはウコン(ショウガ科ウコン属、英語名:turmeric)の根茎に比較的高濃度に含まれている黄色の成分であって、カレーが黄色い理由の一つです。カレーの作り手によっては様々なスパイスを加えるでしょうから、クルクミンの含有量も様々だということになります。個人でカレーを作られる場合は、「秋ウコン粉末」または「ターメリックパウダー」が市販されていますので、それを好みに応じて配合すれば、確実にクルクミンが含まれることになります。なお、クルクミン含有量に着目するならば、秋に収穫されて作られた「秋ウコン」を選ぶことが重要で、クルクミンの含有量は5%程度と多くなっています。
 クルクミンを摂取すると、何割かは小腸で吸収されて血中に入り、複数の代謝産物に変化していきますが、そのうちの主要なものが〝テトラヒドロクルクミン(Tetrahydrocurcumin)〟だということになります。また、小腸で吸収されなかった残りの大部分は大腸に居る腸内細菌によって代謝されてテトラヒドロクルクミンへと変化します。
 テトラヒドロクルクミンの抗がん作用の機序ですが、掲載した図(高画質PDFはこちら)の右寄りに、全体像を示す図を引用させていただきました。作用機序が大きく6つに分けられており、そのそれぞれについて更に詳細な機序が書かれていますので、ご興味のある方は図から読み取っていただければと思います。なお、6分類の項目だけ挙げておきますと、炎症の低減、(がん細胞の)増殖阻止、(がん)転移の阻止、(がん細胞の)プログラム細胞死の誘導、免疫機能の増強、抗酸化活性、ということになります。上述しましたように、このような多面的な作用は、西洋薬の抗がん剤では実現することはできません。
 なお、クルクミンと、その類縁物質を高濃度に含むように精製したサプリメントが市販されていますが、大腸がんを患っていたリ、特に大腸がんを予防したいという場合には、このような製品の利用が非常に有効になると考えられます。それは、大腸にまで届く割合が多く、また、クルクミンには腸内細菌叢を健全化する作用も確認されているからです。一方、全般的ながん予防や健康増進のためには、これまでに紹介してきた各種のファイトケミカルを摂りつつ、秋ウコンの粉末を使った料理(カレーなど)を1~2週間に一回程度食べるのが、食生活を豊かにするという面でも良いのではないでしょうか。
 因みに、クルクミンの抗がん作用につきましては研究の歴史が長く、「(昔の)インド人にはがんが少なかった」という調査結果が研究の発端になったと言われています。そして今も、世界有数の研究機関によってテトラヒドロクルクミンの詳細な作用機序について研究が続けられています。クルクミンやテトラヒドロクルクミンは、神の恵みのうちの大切な一つだと言えるでしょう。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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