マグネシウム補給はがん対策にも欠かせない

マグネシウム摂取量が多いほど、がん発症リスクが低下する。

 マグネシウムにつきましては、以前に『普通に食べているだけではMg欠乏症になる可能性が高い』というタイトルにて書きました。そのときのポイントは、血中のマグネシウム濃度を調べて論じるのではなく、細胞内のマグネシウム濃度に着目しなければならないことを指摘させていただきました。また、対象疾患としては現代において普通に見られるメタボリックシンドロームに着目し、マグネシウム不足との関係を見てみました。そこで今回は、がんとの関係について見てみようと思います。

 まずは、図(高画質PDFはこちら)の中央の上下に掲げた乳がんや膵臓(すいぞう)がんとマグネシウム摂取量との関係を示したグラフを見てみることにします。
 上段のグラフの乳がんにつきましては、縦軸にオッズ比と呼ばれるものが採られていて、マグネシウム摂取量が最も少なかったグループの乳がん発症リスクを1.0とした場合、最も多く摂取していたグループのリスクは0.6倍にまで低下していたことを示しています。それらの中間の摂取量の場合も含めて概観してみると、マグネシウム摂取量が増えるほど乳がんに罹る人が少なくなることを確認することが出来ます。
 下段のグラフは膵臓がんの場合ですが、縦軸には相対リスクが採られていて、マグネシウム摂取量が最も多かったグループの膵臓がんリスクを1とした場合、最も少なかったグループのリスクは1.76倍に高まっていたことを示しています。それらの中間の摂取量の場合も含めて概観してみると、マグネシウム摂取量が減るほど膵臓がんに罹る人が増えることを示しています。
 両グラフの作り方は異なっていますが、まとめて言うならば、マグネシウムを多く摂取しているほど、がんに罹りにくい、ということになります。

 個々のがんについてマグネシウムとの関わり方をそれぞれ説明しようとすると膨大な量の内容になってしまいますので、大雑把にまとめて紹介することにします。図の右上にも書いたのですが、マグネシウムが不足すると、体内におけるATPを用いたエネルギー代謝や、莫大な種類の代謝酵素による物質代謝が進まなくなります。そのため、特に〝分泌〟を主な作業としている細胞(腺細胞、分泌細胞など)にとっては、作りかけの物質が溜まったり、欲しい物質を作れなかったりなどの、致命的な障害をもたらすことになります。その結果、細胞内や細胞周囲が悪条件になったり悪環境になったりしますし、代謝途中の物質の中には発がん性の高いものもあります。そのような悪条件や悪環境になった場合、細胞はそこで生き延びるためにがん化するわけです。がん化とは、封印していた潜在能力を解き放つことです。換言すれば、先祖返りであるとも言えます。生物進化から見れば、激変してきた地球環境で単細胞生物として生き抜くために獲得した能力をコードしている遺伝子群を発現させることです。
 逆から言えば、マグネシウムに不足が無ければ各種の代謝が円滑に回り、好条件や好環境が継続することになって、がん化する必要が無くなるわけです。即ち、がんには罹らないのです。

 対策は、特に細胞内のマグネシウム濃度を高めることです。もちろん、その前に血中マグネシウム濃度が高まるわけですが、イメージとしては正常範囲の上限まで血中マグネシウム濃度を高めることです。仮にマグネシウムを摂り過ぎた場合、正常な腸管であれば過吸収は抑制され、腎機能が正常であれば高まり過ぎた分は速やかに排泄されます。この仕組みは、人類の祖先が海水中に暮らしていたことと、現代の人類でも海水浴で海水を多量に飲み込んでも高マグネシウム血症にはならない仕組みが出来上がっているからです。
 「私はサプリよりも食餌から摂る主義です」と言われる方が何割かいらっしゃいます。一見、美しい考え方のように思えますが、実際問題、現代に出回っている食餌のみから充分量のマグネシウムを得ることは不可能に近いと思っていただければ結構です。先ほど見ていただいたグラフからも明らかなように、マグネシウムを最も多く摂っていたグループよりも、更に多くのマグネシウムを摂った場合、がん発症リスクが更に低下する可能性のほうが高いからです。

 因みに、図の右下に挙げた写真は、我が家におけるマグネシウム補給の手段です。塩化マグネシウムの粉末(結晶の集まり)は、豆腐のニガリなどとして使われている食品添加物グレードか、それ以上のものなら、どこの商品でも結構かと思います。それを、ノズル付きの容器に溶けるだけ入れて水溶液を作り、そのまま数プッシュして口の中に放り込んでいます。慣れないと苦さで嫌になるかもしれんせんが、慣れれば不快ではありません。また、歯や歯茎を含めた口内に濃いマグネシウム溶液が作用しますので、歯周病なども皆無となります。このような恩恵は、食品中からマグネシウムを得ようとすることでは得られませんので、超お勧めの方法となります。

 
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