脂は体内で作るものであって食べるものではない

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の恐怖

 戦前や戦中では兄弟が5~7人居るのが普通でした。しかし現代になり、子どもが欲しくても出来ない人の割合が急増しました。一見、栄養状態が格段に良くなったと思っている人が圧倒的に多いことと思われますが、実際には逆になっています。何故こんなことになってしまったのでしょうか…?今日は、その最大とも言える原因について紹介しようと思います。

 これは、子宮がんや卵巣がんの増加とも関係していますし、がんに至らなくても、月経痛や腰痛の大きな原因になっています。また、不妊症の原因の約半数を占めているとされていますが、実際にはもっと多いと推察されます。進行した場合の疾患名としては〝子宮内膜症〟ということになりますが、病状が進んだ時に精密検査しないと判りませんので、多くの場合は原因も判らずに悩んでいる人や、自覚症状は無いけれども不妊の状態である、というケースが非常に多いことと思われます。

 では、その最大原因を紹介することにしますが、特に脂がたくさん混じり込んでいる動物の肉(例:霜降り肉など)を摂取する頻度が増えたことです。成分としては、掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上に挙げられているようなもので、一つは〝飽和脂肪酸〟と総称されるものです。その内訳は〝ステアリン酸〟や〝パルミチン酸〟という、常温で固体になる脂です。
 もう一つは〝トランス型不飽和脂肪酸(俗称:トランス脂肪酸)〟で、日常生活においては油脂類がマイクロ波加熱(電子レンジなど)によって加熱されたときに含有量が高まることになりますので、例えば唐揚げを電子レンジにて温め直すと、そのたびに含有量が増えることになります。なお、日本においてもトランス脂肪酸を減らす努力が続けられていますので、平均的には以前よりも含有量は減ってきていることと思われますが、ショートニングなどを使って作られている菓子パンや焼き菓子類にも、多少なりとも含まれている可能性があります。

 具体的に、これらがどのような影響を与えるのかについて左上の図を元に紹介しますと、一つは、食餌性脂肪の総摂取量が多いほど子宮内膜症のリスクが高まることです(黄色の太い矢印)。二つ目は、摂取する総飽和脂肪に占めるステアリン酸の比率が高かったり、トランス脂肪酸の量が多かったりすると、炎症が亢進されることです(オレンジ色の太い矢印)。三つめは、パルミチン酸の摂取量が多いほどエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が亢進することであり、これが子宮内膜症のリスクを高めることになります(緑色の太い矢印)。
 因みに、牛乳を飲むことによって体外からエストロゲンが追加された場合や、夜勤などによってメラトニン不足でエストロゲンの分泌抑制が効かなくなった場合、体内のエストロゲン総量が更に増えることになりますので、子宮内膜症と共にホルモン性がんのリスクを更に高めることになります。

 飽和脂肪酸(特にパルミチン酸やステアリン酸)を食べることについてですが、私たちの直系の祖先である類人猿の食生活を見てください。霜降り肉や唐揚げは食べてないでしょう。そもそも分子量の大きい(炭素数:18~20の)飽和脂肪酸は、ヒトも含めた動物がブドウ糖を元にして自ら合成し、体内に貯蔵脂肪として蓄えるための物質です。単位重量当たりに蓄えられるエネルギー量が多いため、この形にしてから貯蔵することになった物質であって、食べられるために作られたものではない、ということです。

 朝は食パンと牛乳、昼は脂たっぷりの軟らかい唐揚げを食べながら白いご飯を食べ、夜には美味しくて軟らかい霜降り肉を楽しむ…、というような食生活を繰り返したならば、それによって赤ちゃんは若くして授からなくなるものと思ってもらって結構です。そして、やがては上述したような種々の疾患にかかることになります。
 この記事を読んでいただいている方々には該当者はいらっしゃらないですが、上述のような食事をしているにもかかわらず、玄米に毒があるとか、緑茶の残留農薬が心配だとか言ってそられを避けている人がいれば「注意するポイントがズレていますよ」と厳重に注意してあげてください。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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