日光は確実にがんを遠ざける

日光は確実にがんを遠ざける

 日光(太陽光線)には積極的に当たるべきなのか…? それとも、出来るだけ避けるべきなのか…? 多くの人に質問すれば、様々な答えが返ってくることでしょう。なかには、先天的な事情によって、日光を完璧に避けることが必須である人もいらっしゃることでしょう。そのような状況の中、今回は、がん(悪性腫瘍)と日光の関係について、結論を導き出しておきたいと思います。

 先に、掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上のグラフを見ていただくことにしましょう。これは〝緯度別の大腸がん(colorectal cancer)罹患率〟が示されたもので、横軸には〝緯度(Latitude)〟が採られていて〝0〟が赤道直下になります。また、縦軸には〝10万人当たりの罹患率〟が採られています。各点は国を示しており、それぞれに国名を示す略号が振られていますが、詳細は割愛します。なお、日本だけは赤枠で囲んでおきました。
 大腸がんは、食べ物の種類を含めた食習慣の如何によって大きく左右されますから、バラツキは大いに有ると言えます。しかし、全体的な傾向としましては、赤道付近に位置している国では大腸がん罹患率が低く、高緯度に位置している国ほど罹患率が高くなっています。
 ところで、緯度の違いは何の違いを意味しているかですが、一つは、地表に届く太陽光線の強さ(エネルギー量)です。四季を通じて、赤道直下に最も多くのエネルギーが届くことになります。二つ目は、気温の違いによる肌の露出度の違いでしょう。寒い国では分厚い服で全身をまといますから、ますます体に日光が届き難くなります。三つ目は、食べ物の種類であり、赤道に近いほど植物性の食べ物が多くなり、極に近ければアザラシなどの肉しか食べられない地域も出てきます。もちろん、前者の方が大腸がんのリスクが低下することになります。
 赤道に近い国ほど大腸がんリスクが低下する理由は複数考えられますが、次のデータを見てみることにします。

 図の左下のグラフを見ていただきましょう。これは、日光に含まれる〝紫外線〟に着目したもので、横軸には〝紫外線暴露量〟が採られています。数値としては実感し難いものですが、一般的に暴露する量の範囲が横軸の範囲になっていると捉えれば結構でしょう。また、縦軸には〝40歳以上の女性が乳がんに罹る相対リスク〟が採られていて、紫外線に全く暴露しない場合が〝1〟になっています。
 これは、統計処理による最終的な結果であると思われますが、紫外線暴露量と乳がんリスクとの間には負の相関、即ち、紫外線に多く当たる人ほど乳がんになり難い、という関係が見られるというわけです。
 乳がんと言えば、最も多いのは性ホルモン代謝の不適切さによるものですが、その原因はメラトニン不足による性ホルモンの過剰分泌であり、メラトニン不足は日照不足とも関係していますので、紫外線暴露量の不足とも関係することになって当然だと言えます。それと共に、紫外線が乳がんを抑制する他の機序が存在する可能性も否定できません。そこで、次のデータを見ていただくことにします。

 図の右下のグラフを見ていただくことにしましょう。これは、〝肺がんを除く全てのがんについて〝UVB指数(横軸)〟と〝がん罹患率(縦軸)〟を男女別に見たものです。なお、肺がんが除かれている理由は、UVBの影響よりも喫煙や作業環境中の発がん物質に暴露する程度が特に男性に多く、UVBとの関係を見極める場合の統計処理に悪影響を及ぼすからです。もちろん、そのような男性を除けば、UVBと肺がんの関係も、次に述べる結果に合致していると考えられます。
 さて、その結果ですが、男女ともに〝UVB指数〟と〝がん罹患率〟との間には負の相関、即ち、UVBに多く当たる人ほどがんになり難い、という関係が見られることです。因みに、単に〝UV指数(UVインデックス)〟という場合の数値に対して、この〝UVB指数〟の数値が小さい理由は地表に届く量が少ないからですが、少なくても波長が短いため高エネルギーだということになります。

 以上、3種類のデータを見ていただきましたが、日光や紫外線は確実にがんを遠ざけている、ということを確認できます。
 では、日光に含まれるUVB(特にビタミンDの合成作用)だけが有効なのか…? という疑問が生じるでしょうが、UVAにも多くの健康効果、即ち、抗不安や抗うつ効果、甲状腺機能の賦活、生殖腺の賦活と性ホルモン分泌促進、免疫機能の正常化、血管拡張と血流促進、血栓分解、コレステロール代謝の正常化などの効果を有します。また、紫外線以外では、他の記事『昔は竈から放射される近赤外線も乳がん予防に役立っていた』にて述べましたように、近赤外線はプロトポルフィリン9を蓄積したがん細胞に対して特異的に傷害性を示すことになります。また、遠赤外線は皮膚表面から血流を介して全身を温めますから、体温上昇によって免疫機能が高まると共に、温度が高まった組織中に多くの酸素が供給されることになります(ボーア効果)。体に直射日光が当たると暖かく感じることからも明らかなように、近赤外線も遠赤外線も想像以上に多く含まれています。他にも、可視光線や、電波と言われる領域の電磁波も含まれていますから、これらも相まって高い抗がん効果を示すことになります。

 日光を浴びる場合の注意事項ですが、『発症率100%の白内障を防ぐ方法』にて述べましたように、人生100歳時代に突入した現代、70歳代や80歳代で水晶体を紫外線によって濁らせるわけにはいきませんので、出来るだけ目から紫外線が入らないようにする必要があります。また、紫外線による皮膚の光老化も避けたいところです。
 従いまして、図の上段中央に記しましたように「目(水晶体)、顔面、光老化が気になる部位以外には、出来るだけ多く太陽光を当てよう!!」ということになります。個人によって「ここなら日光に当てても良い」という部位が異なると思いますので、工夫しながら、日光による抗がん効果の恩恵を受けていくようにしましょう。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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