今回の記事は、“タウリン”に関する記事の3本目になります。
ところで、某大手製薬会社から、タウリンを800mg(50mL中)配合した「リポビタンD キッズ」という商品が、医薬部外品として売り出されています。まぁ、商品名を検索すれば会社名もすぐに判りますけどね…。対象年齢は5~14歳で、1日に1回1本(50mL)を服用する(飲む)ことになっています。私が毎日飲んでいる海外サプリメントのタウリンは、1カプセルに1,000mgのタウリンが入っていますが、800mgを5歳児が飲むとなると、けっこうな量を飲むことになります。ただ、タウリンは水溶性ですから、もし多過ぎればすぐに排泄されますので、問題は無いと言えます。むしろ、子どもたちはこれほどの量のタウリンを必要としている…、と某製薬会社が判断していることの表れだと言えます。
これで、子どもから大人まで、充分量のタウリンで満たすことが出来る…と思いきや、大問題の人たちがいます。それは、妊婦さんです。
海外では、添付しました画像(高画質PDFはこちら)の右下の小さな写真に見られますように、妊婦さんも、ごく普通にカプセルタイプ(大抵は1,000mg)のタウリンを飲んでいます。人生で最も大量のタウリンを必要とする時期ですので、サプリメントによる補給が欠かせないというわけです。海外ではタウリンは食品扱い(補助食品;サプリメント)ですので、このように安価なカプセルタイプのタウリンを普通に購入して飲むことができます。しかし、日本の場合は事情が異なるわけです。
日本の場合、豚の胆汁などから抽出して、ある程度精製した“低純度タウリン”は食品添加物として認められているのですが、“高純度の合成タウリン”は食品添加物(食品の一種)として、今も使えない状態になっています。そして、その高純度タウリンは、医薬品または医薬部外品の原料としてのみ使えることになっているのです。結局、日本の場合は、医薬部外品としてのドリンク剤を購入することの一択となり、冒頭で紹介しました子ども用のドリンク剤も、これに該当することになります。
…ということは、妊婦さんはどうなっているのか…。妊婦さんの栄養指導は、基本的には医療機関が行っていて、その流れの中で行政が行うこともありますが、話の中身は医療機関が行うものに準じることになります。例えば妊婦さんが「妊娠中にもタウリンの補給が重要だと聞いたんですが、どうなんでしょう…?」と質問すれば、返ってくる答えは「タウリンはそもそも医薬品ですし、市販のドリンク剤にも入っていますけれど、妊婦さんへの安全性は確約できませんので、お飲みにならないほうが賢明だと思います」などという答えが返ってくることでしょう。そこで妊婦さんは「わかりました」と答えて、タウリン補給は行わないことになります。
或いは、「タウリンは魚介類に多いと聞いたんですが、妊娠中に食べても大丈夫ですか?」と質問すれば、「生ものはあまり食べないようにしなければなりませんし、特に大きな魚は水銀汚染などの心配がありますので、食べるとすれば小魚を加熱調理してから少し戴く程度にしてください」などと言われることでしょう。しかし、タウリンは熱に弱いですし、水溶性ですので煮ると煮汁の中に出て行ってしまいます。そのため、加熱調理されたものに含まれるタウリンの量はかなり少なく(1/3~1/5程度に)なってしまいます。
もう一つ挙げるとすれば、動物の肉の中にもそれなりの量のタウリンが入っていますが、焼いたり煮たりしますので、この場合もタウリンの量はかなり少なくなっています。また、アミノ酸のメチオニンやシステインがタウリンの生合成原料になりますが、そもそも人体における生合成能力が低いため、それに期待することはあまりできません。おまけに胎盤の調子が良くなければ、血中のタウリンを濃縮したり胎児へ送ったりする能力も低下していますので、特に胎児の脳の形成・発達に大きな悪影響を与えることになります。
上記のことをごく短くまとめて言うならば、胎児はタウリンを自分で作れず、脳の発達に必須であるにも拘わらず、日本ではタウリンは医薬品扱いのため妊婦さん向けのサプリメントは存在せず、さらに妊婦さんは生の魚介類を避ける必要があり、加熱調理したものではタウリンが大幅に減っています。即ち、妊娠中は“タウリンを最も必要とする時期”であるにも拘わらず、“タウリンを最も摂りにくい時期”でもあるという矛盾が、この日本において生じているわけです。
せっかくの機会ですので、低純度のタウリンが食品(食品添加物)扱いであるにも拘らず、高純度の安全なタウリンが食品として(サプリメントとして)利用できない、誠に理不尽な日本の現状に至っている理由を紹介しておこうと思います。因みに、私は、このようなことを書くが故に、公的医療機関の情報で埋めつくそうとしているGoogleのアルゴリズムによって埋没させられてしまうのです(^^; しかし、私は迎合せずに戦い続けます。
上述しましたように、日本では、タウリンは「医薬品」あるいは「医薬部外品」として扱われていて、高純度のタウリンを食品として自由に摂ることはできない仕組みになっています。こような仕組みの裏側には、次のような歴史的背景があるのです。かつて、日本の大手企業が、高純度タウリンの合成技術を世界で最も効率的に確立した時期がありました。この技術は当時としては非常に高度で、大量生産が可能で、しかも高純度で安定した品質を保てるという、国際的にも競争力のあるものでした。当然ながら、その企業にとって最も利益が大きいのは「医薬品・医薬部外品」として販売することであり、食品として自由に流通させてしまうと価格が下がり、他社の参入も容易になってしまいます。そのため、高純度タウリンを“食品添加物としては認めない”という制度を維持することが、企業側にとって極めて都合が良かったのです。言い換えれば、医薬品として先に市場が形成された成分は食品には降ろさない、という日本特有の慣習を生み出すことになったのです。客観的に見ても、当時の日本の産業構造や行政の判断基準を踏まえると、高純度タウリンを食品扱いにしないよう、企業側が働きかけたことは明らかです。こうして日本では、科学的な理由ではなく、産業構造の都合によって、タウリンが自由に摂れない国になってしまったのです。一方、海外では、タウリンはアミノ酸のサプリメントと同様に普通に販売され、妊婦さんを含め多くの人が日常的に利用しているわけです。
因みに、海外製のカプセル入りのタウリン(添付した画像の右下のようなもの)には、1,000mgだけでなく500mgのものもありますので、必要に応じて選んでいただけば結構でしょう。
既に多くの文字数を使ってしまったのですが、タイトルに挙げました“胎児は魚の段階を経由するため高濃度タウリンを必要とする”ことについて、簡単に紹介しておきたいと思います。
これは理屈では無くて、そうなってしまったから仕方ない…という部類の話になります。私たちの祖先がまだ海に住んでいる頃、海水の塩分濃度は時代が進むにつれて濃くなっていったのですが、川の水が流れ込んでくる場所では濃度が薄くなります。また、海と川を行き来する場合には、その浸透圧の差は非常に大きくなります。或いは、磯などの浅瀬に棲んでいた場合には、潮が引いたときには太陽熱で塩分が濃縮されますし、大雨が降ってくれば塩分が薄くなります。そのように、浸透圧が大きく変動する場所に適応する方法の一つとして、細胞内に高濃度のタウリンを貯め、周囲の海水の浸透圧が下がってきた時には細胞内のタウリンを追い出すことによって細胞内の浸透圧も下げる…、という方法を採用したことに端を発します。どのような場合もそうなのですが、生物は、身近にあった物質を様々な用途に有効利用します。具体的には、添付した図の左側に箇条書きにて示しましたように、膨大な種類の役割をタウリンに委ねることになったのです。
併せて、次のようなことも言えるのです。哺乳類の体にも、それなりの濃度でタウリンが存在しています。しかし、魚介類ではもっと高濃度にタウリンが存在しています。その理由は、相変わらず海に棲むため、海水の浸透圧の変動が大きく、陸上の動物よりもタウリンが重要になっているからだと考えられます。そして、魚たちは体内の高濃度のタウリンの存在下で、はじめて諸機能が正常に働くように適応・進化してきているのです。ところが、添付した図の中央の図を見てください。私たちが胎内にいる時、当初は魚の姿をしています。いや、姿だけではなく、各部分も魚の発育発達と同様の経過をたどっていきます。因みに、胎児の脳のタウリン濃度は、成人の数倍~10倍だとされています。
もし、胎児の脳に届けられるタウリンが不足した場合、次のようなことが起ります。それは、脳の構造形成が遅れ、神経細胞の数が本来よりも少なく、学習能力や運動能力が高まらず、視覚機能(網膜)も発達不全となる、ということです。これを裏付ける話としましては、かつて人工乳にタウリンが配合されていなかった時代では、乳児に発育遅延、網膜の変性、心筋症などが発生したということです。
脳におけるタウリンの役割としましては、ニューロンの成熟、ニューロンの移動(ガイダンス分子の調整)、アストロサイトの発達、シナプス形成、ミトコンドリアの保護、過剰な興奮の抑制、などを挙げることができます。また、最近の研究では、中年の男女にタウリンを補給すると、脳の栄養因子である BDNF が増え、ミトコンドリアの働きが良くなり、神経の炎症が静まり、記憶力、注意力、処理速度が改善したという結果が出ていますので、脳にとってタウリンは生涯において欠かせない物質だということになります。
先にupしていますタウリンに関する2本目の記事「健全な若者でも別途補給しなければタウリン不足になる」では、健全な若者でも人によって血漿タウリン濃度には2倍以上の開きがあり、大半はタウリン不足であることを紹介しました。だからこそ、海外の妊婦さんはサプリメントとしてタウリンを摂取しているのですが、日本の多くの若い女性はタウリンをサプリメントとして摂れない、生の魚介類を食べる機会も少ない、妊婦さんの栄養指導などでもタウリンの重要性を聞かないとなると、発達遅延を起こす胎児が頻発しても何らおかしくない状況であると言えるのです。
