就寝時刻は何時にするのが最適なのか

寝床に入る時刻は午後10時45分~11時が最適である

 今回は〝睡眠〟を主テーマとした記事の4本目になります。タイトルに示しましたように、何時にベッドインするのが最も良いのか、という命題に対する答えをハッキリさせておこうと思います。もちろん、仕事の都合や通勤時間の都合によって、自分の理想の就寝時刻が実現できていない場合も多いことと思われます。また、体質的な個人差もあるでしょうから、全員が当てはまるとは言い切れないのですが、ヒトという生物種であることは皆同じなのですから、ヒトとしての理想像を知っておくことは大切なのだろうと思います。

 何時間眠るのが最も良いのかというお話(『死亡率が最も低くなる睡眠時間』)を先にupしましたが、その時間を何時から何時までにするのが最も良いのか…、ということを探るのが今回の目的です。
 「睡眠時間さえ確保できれば良いのではないですか?」という疑問に対しましては、心身には概日リズムというものが備わっていますので、それと調和しない生活を続けていると、様々な弊害が生じてくることになります。なお、それらの詳細につきましては、先にupしています『眠らない街が現代病を連れてきた』や、『一個一個の細胞にも時計が仕組まれている』をご覧ください。

 では、代表的なデータを見てみることにしましょう。掲載した図(高画質PDFはこちら)の左上は、SHHS(Sleep Heart Health Study)と称する研究によって、計4,824人から得られた種々のデータを元にして、就寝時刻と死亡率との関係について解析された結果になります。
 結論的には、図に示されている通りなのですが、午後11時に就寝した人の死亡率が最も低くなりました。そして、「早く寝ることは良いことだ」と思っていた人にとっては少々ショッキングな結果だと思いますが、例えば午後9時に就寝していた人の単位期間における死亡率(ハザード比)は、午後11時に就寝していた人の単位期間における死亡率の、およそ2倍になっています。ここまで大きな差になっていると、午後9時や、それよりも早く寝ることは、非常に怖いことだということになります。
 また、例えば夜更かしして午前1時に寝る人の場合、これも同様に単位期間における死亡率がおよそ2倍になっています。大抵の人は、夜更かしは良くないと思っていることでしょうから、これは予想通りの結果だと思われます。

 次に、その真下の図を見て頂きたいと思います。これは、調査された対象が異なっていて、骨粗鬆症性骨折の男性2,658人のデータを基にして、就寝時刻と死亡率との関係が解析された結果です。このような集団を解析する意味は、何らかの疾患が就寝時刻と死亡率との関係を修飾するか否かを確認することが可能になることです。
 結果として、死亡率が最も低くなったのは午後10時50分あたりに就寝していた人たちでした。概して言えば、このような疾患を伴っている場合、早めに就寝することによる死亡率の高まり方は、やや穏やかになると言えます。

 次に、掲載した図の右上の図を見て頂けますでしょうか。これは、平均年齢が63.6歳となる4,765人を調査対象として、うっ血性心不全に罹る率と就寝時刻との関係が解析された結果です。因みに、うっ血性心不全と言いますのは、心筋梗塞とか、心臓弁膜症とか、心筋症などによって心臓のポンプ機能が低下することによって血流が損なわれる疾患を指します。
 結果としましては、午後11時に就寝していた人が、うっ血性心不全に罹る率が最も低かった、という結果になりました。死亡率を見るのではなく、このような疾患との関係を見たわけですが、死亡率を大いに高める原因になる疾患ですので、同様の意味を持つと言えます。
 ただし、例えば午後9時に寝ていた人のハザード比がおよそ1.25と、あまり高まっていないことが見どころの一つだと言えるでしょう。即ち、心疾患のリスクの高い人が早めに寝ても、それ以上に他の要因による心疾患リスクが高まっている状態であると解釈できるわけです。要するに、就寝時刻よりも他に注意すべき重大なことがあるというわけです。

 就寝時刻についてまとめておきますと、健康な人であっても、何らかの疾患を持っている人、またはそのリスクが高い人であっても、死亡率が最も低くなる就寝時刻は、午後10時45分~午後11時あたりであることが判ります。即ち、〝寝床に入る時刻は午後10時45分~11時が最適である〟ということになります。

 図には、他の解析結果として、起床時刻と全死亡率との関係が示されています。一般的には、午前6時30分に起床する人の死亡率が最も低く、骨粗鬆症性骨折の男性の場合では、午前6時50分に起床する人の死亡率が最も低かった、という結果になっています。 両者を勘案しますと、〝起床の時刻は、午前6時30分~6時50分が最適である〟と言えそうです。

 就寝時間との関係を総合的に見てみると、次のように言えそうです。即ち、寝床に入ってからしばらく経ち、午後11時30分に入眠したとすると、午前6時30分までは7時間となり、死亡率が最も低くなる睡眠時間となるわけです。また、寝付きが良くて午後10時50分に入眠し、午前6時50まで睡眠をとった場合は、8時間睡眠になります。
 余裕を持たせて言うならば、午後10時45分になったら布団の中に潜り込み、45分間は難しそうな本を読み(面白くて目が覚める本を読んではいけません)、11時30分には寝落ちしてしまい、そのまま午前6時30分まで眠り、遅くても午前6時50分までには布団から出る、というパターンが理想的だと言えそうです。

 
執筆者
清水隆文

( stnv基礎医学研究室,当サイトの keymaster )
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