今日は7月の〝ど真ん中〟の日なのですが、屋外では〝ニィニィゼミ〟の大合唱が繰り広げられています。夏に鳴く蝉(セミ)の中で、最も早い時期から鳴き始めるのが、このニィニィゼミで、他の種類の蝉はまだ鳴いていません。そのため、この蝉だけの純粋な大合唱を聞けるのが、この時期の良いところです。
各種の蝉の中では、体が最も小さく、小さいからこそ高い周波数の音を沢山出すことができます。その周波数は、ヒトには聞こえない20kHz(キロヘルツ)以上の成分が多く含まれていますので、ヒトに対する健康効果も相当高いものになります。
先に、ヒトに対する健康効果を羅列しておきます。それは即ち、脳全体の活性化、脳内の血流増加、認知機能や学習能力の向上、鬱や発達障害の改善、集中力や注意力の向上、ポジティブ思考の増強、精神の安定、幸福感の上昇、自律神経機能の向上、ストレスの低減、痛みや炎症の軽減、末梢組織の血行促進、疲労回復、血糖値上昇の抑制、糖尿病の改善、自然免疫の増強、抗感染症、抗がん、寿命・健康寿命の延長、などです。
なお、このような健康効果は、自然界のものが発する〝可聴音+超高周波音〟であれば、ニィニィゼミだけに限られるものではないのですが、この大音量(大音圧)を全身に浴びせることが出来るものは限られています。強いて挙げるならば、蝉の他には、滝の水の音、海の波の音ぐらいでしょう。
もし、このような音を浴びることが出来ない環境に身を置きますと、若者であれば、自殺者が増えたりします。なお、この件に関しましては、先にupしています『生命信号を浴びると心身の機能が高まる』におきまして、昔の筑波学園都市で起こった例(つくばシンドローム)を紹介していますので、必要に応じてご覧ください。
或いは、病院に入院して、蝉の声や自然界の音が侵入してこない建物内でしばらく過ごしますと、どれほど高度な医療を提供されたとしても、それによって患者さんが健康を取り戻すことはありません。しかし、なんとか退院できた場合、夏場ならば蝉の声が聞こえる環境に戻ったとき、初めて健康を取り戻すことが可能になるわけです。
或いは、遮音の効いたマンションなどに暮らし、例え外出したとしても蝉の声が聞こえないような環境である場合、つくばシンドロームと同様の結果となります。また、年齢を重ねた人であれば、各種の生活習慣病や感染症に罹りやすくなり、健康寿命を短縮してしまいます。
一般的に、蝉の声と健康が関係しているなどと思っている人は、極めて少数だと思われます。もちろん、以前から当研究室のブログを読んでくださっている方々は別ですが…。
ニィニィゼミの話に戻りますが、この蝉は早朝に空が少し明るくなってきた頃(4時半頃)には鳴き始め、夜まで鳴いていることもあるのですが、最も多くの個体が一斉に鳴くのは昼前後です。そして、今日の昼過ぎには、あまりにも強烈に鳴いていましたので、思わずスマホにて測定してしまった、というわけです。
掲載しました図(高画質PDFはこちら)の中央付近に黄緑色~黄色で示された〝音声スペクトラム〟がありますが、これは13時過ぎに測定したものです。
因みに、アプリ(アプリケーションソフトウェア)は、iPhone用の「Sonic Tools」です。他にもあるのですが、これは20kHzまで表示できることと、他の機能も充実していますので、これにしています。なお、パソコン用には可聴範囲を超えて解析できるものがありますので、このスマホ用のものは、あくまで可聴範囲だけの簡易的なものとなります。
では、スペクトラムをご覧いただきたいのですが、ニィニィゼミの鳴き声のピーク周波数は、約8.5kHzでした。これは、かなり高い周波数の高音だと捉えてもらえば結構です。
そして、ニィニィゼミが沢山鳴いている木の下での音の大きさ(のピーク)は86dB(デシベル)でした。86dBといいますと、人間が大声を出した時の音量、或いは、パチンコ店内の音量に相当するということなのですが、悲しいことに、私がパチンコ店に一瞬だけ足を踏み入れたのは若い頃に3回程度ですので、最近のパチンコ店の音量はピンと来ません。
ニィニィゼミの鳴き声の第2のピークは18kHzで、これは「モスキート音」と呼ばれている周波数です。従いまして、この周波数の高音は、少なくとも30歳を超える人の場合は殆ど聞こえない音です。ただ、骨伝導や皮膚から受容された信号が脳内に届いていることは事実です。なお、これに関する詳細は、既にupしています『ヒトは耳で超音波を拾うことが可能である』をご覧ください。
比較のために、家の表にぶら下げている古い風鈴を、人力で強引に「ガンガンガン」と激しく鳴らした時の音も計測してみました。それが、掲載した図の下段のスペクトラムです。
主なピークが4本見え、最も音圧が高いのは約17.8kHzの90.7dBですが、この音は私の年齢では殆ど聞こえてないかもしれません(^^; 次に音圧が高いのは約10kHzですが、この音圧ならばニィニィゼミのほうが大きいです。その次に音圧が高いのは3.8kHzあたりですが、これで約80dBぐらいです。
その他、蝉との違いは、蝉は連続的にその音を発しているのに対して、風鈴の場合は鐘が叩かれた瞬間だけ大きな音がして、すぐに減衰してしまうことです。
結局、風鈴を人力で強引に大きく鳴らした場合、鋭いピークを形成する周波数の音圧はそれなりに高いのですが、それ以外の周波数では音圧が低いです。また、風鈴は鐘が叩かれた瞬間の音が大きいだけで、すぐに減衰してしまいます。従いまして、総エネルギー量としてはニィニィゼミの合唱の方が、遥かに大きいということになります。
なお、このスペクトラムで物足りないのは、20kHzまでしか表示されないことです。スマホのマイク(兼、スピーカー)は超小型ですから、可聴域を超えて拾えていると思われるのですが、巷では「聞こえないものまで分析する必要は無いでしょう」という風潮ですので、仕方ありません。因みに、パソコン用では超高周波音まで分析可能なソフトウエアが幾つかあります。
以上のように、ニィニィゼミはその小さな体から、風鈴を遥かに超えるエネルギー量にて〝可聴音+超高周波音〟を放射してくれます。これもまさに、神様からのプレゼントでしょう。上述しましたような様々な健康効果がありますので、可能な限り、全身で浴びてください。
なお、「近所では鳴いてないよぉ」という方は、ここに、私が録った音源がありますので、聞いてみてください。また、可聴域を超えて再生できる環境をお持ちの場合は、このWAVファイルを聞いてみてください。また、その他の蝉の声も聞いてみたいという方は、当研究室の『自然界の音』に色々とリスト化していますので、健康増進のためにご利用ください。では、夏を満喫しましょう。