肌の若返りにはレジスタンストレーニングの方が有効

レジスタンストレーニングの場合は皮膚の厚さを増すことができるのが特徴

 老化が進むと皮膚が薄くなってシワ(皺)が出来やすくなります。しかし、何らかの方法によって皮膚を厚くすることが出来れば、シワを回避すること、更にはシワを伸ばすことが可能になります。もちろん、紫外線対策、栄養面や精神面の改善は重要ですし、化粧品などを含めた皮膚表面からの機能性成分の補充についても有効なものがあります。ただ、上記の全ての対策を行っているという芸能人の方でも、年齢相応にシワが増えている方が沢山いらっしゃいます。私は個人的に思うのですが、そのよう方の場合、筋トレ(レジスタンストレーニング)をされていないのではないかと勝手に想像しています。

 そのことを証明するかのように、図(高画質PDFはこちら)の右上に引用させていただいた研究結果が2023年6月に報告されました。原著には非常に詳細な実験データが記載されていますので、ご興味があれば見に行っていただければと思います。概略を申し上げますと、健康だけれども日頃は座りがちであるという中年の日本人女性61名を対象とし、16週間(4カ月)にわたって有酸素トレーニングを行うグループと、レジスタンストレーニング(いわゆる「筋トレ」)を行うグループに分けて、皮膚の老化に及ぼす影響が比較されました。4ヶ月後、どちらのグループも皮膚の弾力性や上部皮膚構造は有意に改善したのですが、皮膚の厚さが改善したのはレジスタンストレーニングを行ったグループだけだったということです。
その機序については、トレーニング期間終了後の検査によって、レジスタンストレーニングを行ったグループにのみ、細胞外マトリックスと呼ばれている成分の一つであり、プロテオグリカンの1種であるBGN(dermal biglycan)が増加し、その結果として皮膚の厚みが増した、という報告でした。もちろん、その他にも各種のコラーゲン、コンドロイチン類、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックスも増加していました。では何故、レジスタンストレーニングの場合だけ皮膚の厚さが増す仕組みになっているのでしょうか…?

 ヒトも含めた生物は次のような特徴を持っています。それは〝適応〟という仕組みを持っていることであり、言い換えれば〝そのことばっかりをしていると、そのことをし易い体になっていく〟ということです。有酸素運動は、比較的長時間にわたって運動をし続けることですから、それに適した体つきになっていくわけです。また、その前提として、生物全体に見られる基本法則である〝省エネルギーを目指す〟ということを具現化していくことになります。例えばマラソンをする場合、体が1グラムでも軽いほうが有利になりますから、徹底的に体を軽くする方向に向かっていくことになります。皮膚の場合もそうです。皮膚は比較的薄い組織ではありますが、これも軽くするに越したことはありません。もちろん、筋肉もそうですし、皮下脂肪もそうです。何でもかんでも軽くする方向へと体が変化していくわけです。だからこそ有酸素運動は、皮膚をも軽くすべく、薄くしていく方向へと働きかけることになるわけです。更に、マラソン中には体温がどんどんと上がっていきますので、皮膚が薄くてシワになっているほど放熱効果が高まりますから、その点でも有利になります。

 既にハダカデバネズミのお話をしましたが(『長寿のハダカデバネズミも老化細胞を完璧に除去していた』)、その図の右下に記載したことの中に、彼らは徹底的な省エネルギー、低代謝量、低酸素・無酸素耐性を獲得していることを挙げています。私自身も抗老化のために有酸素運動は殆どしないようにしているのですが、それはハダカデバネズミから学んだ延命戦略を人体実験しているわけです。もちろん、持久性が必要なスポーツの競技能力を上げたいとか、とにかく心肺機能を高めたいとか、太っているから体重を減らしたい、などという目的があるのであれば、その限りではありません。ただ、多量に酸素を吸い込まなければならない運動を続けると、人生は太短くなることだけは間違いの無いことです。「いや、人生は太短いほうが良い」という価値観をお持ちの方もいらっしゃるでしょから、これ以上は何も申し上げません。

 さて、レジスタンストレーニングの方法ですが、筋肉や皮膚の瘦せを回避したければ、空腹時には絶対に行わないことです。従いまして、プロテインを使うならば、トレーニングの前に何割かを飲んでおいて血中アミノ酸濃度を上げておき、トレーニング後にも追加補給する、という方法によって筋肉量を増やすことが出来ます。アミノ酸を使う場合は、やはり事前にBCAA、ロイシン(またはHMB)、グルタミンなどを摂取することによって、トレーニングによる筋肉や皮膚の痩せを防ぐことが出来ます。なお、このあたりの内容につきましては、『さりげなく筋肉量と筋力を増大させる方法』にて述べていますので、ご参照ください。
 筋肉量を増やしておくことは、筋肉細胞から分泌される様々な種類のサイトカインや機能性ペプチド(総称して「マイオカイン」と呼ばれることがあります)を増やし、その効果を皮膚にまで充分に届けるために重要です。多くの人はボディビルダーになるわけではありませんから、加齢に伴う筋肉減少を防ぐ、ということを目的にすれば良いと思います。
 トレーニングにおける負荷(抵抗、レジスタンス、Resistance)のレベルですが、普通にウォーキングしているだけでは、軽すぎてレジスタンストレーニングにはなりません。体が「筋肉を増やさなければ…」と判断するレベルにまで上げてやることが必須です。上述しましたように、生物は〝省エネルギー〟を目指しますから、「普通に歩くだけなら、このままの筋肉量で大丈夫だろう」と判断してしまいます。従いまして、「筋力的に、これはちょっとキツイ…」と思うレベルの負荷をかけることが必要です。因みに、どのレベルの負荷にするかについては、目的によって大きく異なってきますので、一般的な人が目指すのであれば「ちょっとキツイ」ぐらいの負荷に設定すれば結構でしょう。
 トレーニング頻度ですが、超回復までに2~3日かかりますから、同じ部位の筋肉については2~3日に1回が理想です。それ以上頻繁に行うと、徐々に痩せていくことになりますから、頑張り過ぎないことが重要です。
では、週に何回かのレジスタンストレーニングを行うことによって、シワを伸ばしてみましょう!!

 
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