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◆ 第22話 ── 講演内容~パート1
◆ あかりさんのお話 <1>
こんにちは…。水瀬あかりです。
今日…ここに来てくださった皆さま……
ぎゅうぎゅうの館内で、肩を寄せ合って聞いてくださっている方も……
外で、直射日光や風に当たりながら、立って聞いてくださっている方も…
私は、その姿を見て、胸がいっぱいになりました。
本来でしたら、皆さま一人ひとりに、きちんと席をご用意して、ゆっくり座って聞いていただくべきなのに…… こうして立ったまま…、また…お外で耳を傾けてくださっている方々が、凄くたくさんいらっしゃること…、心から申し訳なく思っています。
そして… ホールに入れないから帰ろう…とか、館内に入れないから帰ろう…などと思わずに、この開演をお待ちいただいたその気持ちが、私には何よりの励ましで、何よりの温かさです…。そのお気持ちに応えられますよう、私も心して…お話しさせていただきたいと思います。
これから…皆さまの大切なお時間を、私が少しだけお借りすることになりますが、どうか…、可能な限り…無理のない姿勢でお聞きいただければと思います。もし、しんどくなってきたら、遠慮なくスタッフの方にお申し付けください。
――そのとき聴衆は――
思いのほか、凄い数の人たちが押し寄せた会場……。150名収容のホールは、開演50分前には満席になり、ほぼ同時に108台収容の駐車場も満車になった。その後に訪れた人は、近隣の駐車場を借りてから会場に向かった。また、ホールの席に着けた一部の人を除き、他の大部分の人は図書館内の他の場所で…、そして…館内にも入れなかった人は屋外で並んだまま、開演を待つことになった。それだけで、さぞかし疲れたであろう…。だが…、あかりさんの声が届いた瞬間、その疲労は、すっかり姿を消した。
あかりさんの、柔らかくて、優しくて、落ち着いた声がスピーカーから広がると、あかりさんの話を聞きに来た聴衆の脳内で、報酬系の中心であるドーパミン神経系が刺激された。そして、「もっと聞きたい」「この時間を味わいたい」という期待感がさらに高まった。同時に、落ち着いた語りのテンポと呼吸のリズムが、セロトニン神経系を活性化させた。不安や緊張を抑える働きを持つこの神経系が整うことで、聴衆の心は静まり「ここにいたい」という深い安心感が広がった。さらに、声の響きに含まれる微細な揺らぎが、脳内のエンドルフィンの放出を促した。これは、心地よさや軽い陶酔感を生み出す物質で、痛みや疲労を和らげる作用を持つ。そのため、立ったまま聞いている人も、身体の負担がふっと軽くなるような感覚を覚えていた。
◆ あかりさんのお話 <2> 地球の環境と火星の環境
今日のテーマは「地球から見た火星・火星から見た地球」ですので、ここから少しだけ…科学の内容を交えたお話をさせていただきますね…。
今、私たちが住んでいる地球は、太陽系と呼ばれる星の集団の一員ですが、その中で、地球以外に人類が住めそうな惑星として、一番の候補にあげられるのが火星です。でも、実際に比べてみると、地球と火星の環境はまったく違うことが分かります。
地球は、私たちが呼吸できる空気があり、水が液体のまま存在し、気温も生物が生きられる範囲に収まっています。でも火星は…、空気は地球の1%しかなく、そのほとんどが二酸化炭素です。気温は氷点下が当たり前で、水は液体では存在できません。言い換えれば、地球は“生きられる星”ですが、火星は“生きるために工夫が必要な星”です。
地球という星が、どれほど奇跡的な環境を持っているのか…。そして、火星という星が、どれほど違う世界なのか…。その違いを知ると、今の私たち自身も、いかに奇跡の存在なのか…ということがよくわかります。
私たちが立っているこの地面、皆さまの頭上に広がっている空、当たり前のように呼吸できるこの空気も……本当は、奇跡的なバランスの上に成り立っています。もし、ここが火星であれば、屋外で私のお話を聞いてくださっている皆さまは、全身を包む重い宇宙服を着ていただかなくてはなりません。
館内で聞いてくださっている皆さまは、人工的に地球環境を再現した館内であれば、酸素を含めた地球の空気を再現する装置のおかげで呼吸することはできます。ただ、重力が地球の0.38倍しかありませんので、そのままだと健全な心身を維持することはかなり難しくなります。そのような、火星生活での問題点や不便さを考えると、このように、ごく普通に生活できるだけで、本当にありがたいことだと思います。
最も短く言うならば、地球はこの広い宇宙の中で、人がそのままの姿で生きることができる、奇跡の星だと言えます。でも…その奇跡の星に、今、静かに危機が訪れようとしています。私たち人類は、便利さや効率を求めるあまり、地球の声を聞くことを忘れてしまった時期がありました。森を削り、海を汚し、空を濁らせ、地球が長い時間をかけて育んできたものを、あまりにも急いで壊してしまいました。
もちろん、それは、誰か一人の責任ではありません。人類全体が、少しずつ、少しずつ、地球の限界に気づくのが遅れてしまっただけなんです。私たちは今、未来に向けて、生活の仕方を根本的に見つめ直す必要があります。そして同時に、地球だけではなく、地球の外側にも目を向けなければならない時代に来ています。
人類は、これから先、地球だけに頼って生きていくことが難しくなるかもしれません。環境の変化、人口の増加、資源の限界… そのどれもが、ゆっくりと、しかし確実に迫ってきています。だからこそ、私たちはやがて、他の惑星を目指すことになります。火星や月、あるいはもっと遠い場所へ……。人類が、地球の外側に居場所を作る未来が、確実に近づいているんです。
――聴衆の様子――
あかりさんの、柔らかくて、優しくて、落ち着いた声色や語り口は、上述したドーパミン(期待・集中)、セロトニン(安心・安定)、エンドルフィン(心地よさ・陶酔)の他にも、聴覚皮質を通じて自律神経系にもダイレクトに作用していた。それによって、聴衆の脳は、緊張がほどけ、呼吸が深くなり、心拍がゆっくりになり、情報を受け取る準備が整う、という“安心の脳波”へと移行していった。すなわち、α波やθ波が自然に優位になり、「この人の言葉は、聞いていい言葉だ」と脳が判断したときにだけ起こる、非常に特別な反応が起こっていた。
そして、その安心反応が広がるにつれ、聴衆の脳内では、複数の領域が同じリズムで動き始める“弱い同期現象”が起き始めた。それは、みのりのMEGで観測された“あの現象”と同じ種類のものだった。脳の複数の領域が、まるで静かに手をつなぐように、同じテンポで動き始める…。言葉の意味を理解する前に、声そのものが脳に届き、脳がその声を受け入れる準備を始めてしまう。そのため、聴衆は気づかないうちに、あかりさんの言葉に引き込まれていった。まるで、声が脳の奥にそっと触れて、静かに扉を開けていくように…。
◆ あかりさんのお話 <3> 地球から見た火星・火星から見た地球
地球と火星の環境の違いや、他の星を目指さなければならない時代が来ていることを、ごく簡単に紹介しましたが、次は火星や地球について、もう少しだけ詳しいお話をさせていただきますね。
昔の人々は、火星を“赤い星”として見ていました。もちろん、火星は自ら光っているわけではありませんので、太陽の光を反射して明るく見えているだけです。そして、その赤さの原因は、火星の表面に広がる酸化鉄、いわゆる“鉄さび”の色が反射しているためです。
ちなみに、火星の表面に酸化鉄が広がっているということは、かつて火星に酸素が存在していた…という証拠でもあります。実際に、初期の火星には、わずかですが酸素があったことが分かっています。ただ、火星は地球と違って、表面に鉄が残りやすい環境だったため、その鉄が酸素をほとんど奪ってしまったのです。
酸化鉄が原因で、火星の大地は赤みを帯びた色になり、地球から観察できる火星も赤っぽく見えるようになりました。そして、この赤い星は、昔の人々の想像力を強く刺激しました。ある時代の人は、火星に文明があると信じました。ある時代の人は、火星に運河があると信じました。そして、ある時代の人は、火星に火星人が住んでいると本気で考えていました。夜空にぽつんと浮かぶ赤い点は、人々にとって、ただの星ではなく、いつの時代も、人類の想像力を映す鏡でした。
次に…、今度は、火星から地球を見たときのお話をしましょう。皆さまが、火星の地面に立っている場合の視点です。
火星の空は、昼間は赤みを帯びて見えます。この理由は、大気中に舞う微細な砂粒や塵が、太陽光のなかの赤い光を散乱しやすいからです。そして、太陽が沈む直前や、昇る直前の薄明の時間だけは、空が青っぽく染まります。この理由は、太陽が低い位置にあると光が大気を長く通り、赤い光が塵に吸収されてしまって減ることで、相対的に青い光が強く見えるからです。地球なら、夕焼けや朝焼けは赤いですが、火星では青くなるのですね。
その青い空が更に暗くなるころ、火星の地平線の向こうに、小さく青っぽく輝く点が現れます。それが、地球です。火星から見た地球は、もちろん、自ら光っているわけではありませんので、太陽の光を反射して、控えめな青い光を返しているだけです。でも、その青い点には、海があり、森があり、人がいて、街があって、今日ここに集まってくださった皆さまの生活もあります。火星の地面に立って、その青い点を見つめると、人は必ずこう思うはずです。あの点の中に、凄くたくさんの生命や、人々の文化があるんだと…。
地球に生きていると、私たちは地球の広さを感じることはあっても、その“かけがえのなさ”を忘れてしまうことがあります。私も、一度計算してみたことがあるんです。この全宇宙で、ヒトのような知的生命体が居る可能性のある惑星は、普通に見積もると、約1億個だということになりました。でも、宇宙はすごく広いです。全宇宙に存在する銀河の数は、約2兆個だと推定されていますので、それを計算に入れると、知的生命体が居る可能性のある銀河の存在割合は、約2万分の1だということになりました。言い換えれば、2万もの銀河を渡り歩いて、ようやく1つの銀河で地球のような惑星が見つかる確率だということになります。ちなみに、この天の川銀河内には1兆個以上の惑星が存在しているのですが、知的生命体が居るのは、極めて高い確率で地球だけだということになります。
火星から地球を見ると、その青く淡く光る地球が、限りなくゼロに等しい確率でしか存在しえない“奇跡の星”であることを実感すると思います。そして、この地球の価値を、改めて思い出させてくれるはずです。
宇宙飛行士の方に伺うと、宇宙に出て地球に帰ってきたとき、いろんなことの見方が変わったとおっしゃいます。それは、宇宙空間に特別な力があるというのではなく、自分が居た場所を外側から見たからだと思われます。……あの小さな星の上で、自分は怒ったり、悩んだり、悲しんだりしていたんだな、と…。
宇宙は、人間に新しい答えを与える場所というのではなく、人間に新しい視点を与える場所だと言えるでしょう。そしてその視点は、地球に戻ってきたあとも、ずっと心の中に残り続けます…。
◆ あかりさんのお話 <4> 火星で生活するために必要なこと
では、そのかけがえのない地球を離れて、火星に移住するとした場合のお話をしようと思います。
なお、この会場には、複数の研究機関から、何名もの研究者の方々もいらっしゃっていると伺いましたので、説明のために少し専門用語が出てくるかも知れませんが、ご了承いただければと思います。
私たちの太陽系の中心にある太陽は、中心付近で起きている核融合反応が徐々に周辺へと移動していきますので、変動しながらも、光度や放熱量はどんどん高まっていきます。そのため、数億~十数億年先には、地球は過熱して生物が棲めない惑星になると予想されます。その分、地球の公転軌道の外側を回っている火星が、生物が棲むことのできるハビタブル・ゾーン内の惑星へと変わっていきます。もちろん、課題はたくさんあるのですが…。そして、その遥か手前である、数百年~数千年後でも、人類の活動や環境悪化によって、住むことができる地球の地域が非常に限られてしまうであろうと考えられています。いずれにしましても、遅かれ早かれ、人類は火星への移住を始めることになります。
それまでに、人類は、火星に地球の環境を部分的にでも再現する必要があります。たとえば、火星の重力は、地球の38%、すなわち0.38Gしかありません。その理由は、火星は地球に比べると小さく、直径は地球の約2分の1、質量は地球の約10分の1しかないからです。
この低重力は、単に筋力や骨量が減るというだけではなく、人間の身体の複数のシステムを同時に変化させます。
まず、骨は重力刺激によって再構築されますので、0.38G では骨芽細胞の活動が低下し、長期的には骨密度が地球の生活では考えられない速度で減少します。
筋肉も同様で、抗重力筋が十分に使われませんので、萎縮が進み、姿勢保持や歩行の安定性が損なわれます。
しかし、もっと深刻なのは循環器系と自律神経系です。重力が弱い環境では、血液が上半身に偏りやすく、心臓は「少ない負荷で血液を送れる」と誤認します。その結果、心拍出量の調整が乱れ、立位での血圧維持が難しくなる“起立耐性の低下”が起こります。
さらに、重力は内耳の前庭系にも影響します。0.38G では前庭入力が弱まり、空間認知・平衡感覚・身体位置の把握が不安定になります。これは、火星での作業効率だけでなく、心理的安定にも影響することが知られています。
少しまとめて言いますと、火星の低重力は、筋骨格系・循環器系・自律神経系・前庭系を同時に変化させる環境因子となりますので、この状態が長期になればなるほど、人は健康を大きく損なっていくことになります。そのため、人が火星で長期間にわたって生活するためには、部分的でも結構ですので、地球の重力に近づける方法を考え、それを火星の表面で実現することが必要になってきます。
ここで少しだけ専門的なお話をさせていただこうと思いますが…、重力を補うと言うと、多くの方は、宇宙船などをぐるぐる回して遠心力を使う方法を想像されると思います。もちろん、それは一つの方法です。でも、火星の地面に設置した居住空間の中で、人が生活するすべての場所を回転させることは、なかなか難しいものです。また、回転部分などは特に消耗しますので、定期的に止めて部品交換なども必要でしょう。そこで私たちは、回転式ではない“複数の方法”を組み合わせて、身体が自然に 1G を感じられるようにする技術を開発しています。
一つは、身体の荷重分布を調整する方法です。人間は、足裏や脚の筋肉、骨盤周囲の受容器で重力を感じています。そこで、床面に特殊な荷重フィールドを作り、立っているだけで“地球と同じ重さ”が身体に伝わるようにします。
もう一つは、筋肉の深部にある受容器を刺激する方法です。重力が弱い環境では、筋肉の奥にあるセンサーが十分に働きません。そこで、微細な振動や圧力を使って、身体が“重さを感じるときの信号”を再現します。
さらに、重力は血液の流れにも影響します。火星では血液が上半身に偏りやすく、心臓が本来の負荷を受け取れません。そのため、下半身の血流を地球と同じ状態に保つための循環補助フィールドも組み込んでいます。
ここまでは、身体の“外側”の話です。でも、重力というのは、身体の外側だけで感じているわけではありません。脳は、重力を“複数の感覚の組み合わせ”として受け取っています。
足裏の圧力、筋肉の張力、骨のわずかな歪み、血液の流れ、内耳の前庭の揺れ…などです。これらがすべて合わさって、脳は『今、私は 1G の世界にいる』と判断しています。
…ですので、私たちが今開発しているシステムでは、脳が自然に『これは 1G だ』と錯覚するように、その一つひとつを丁寧に再現しています。
内耳の前庭系には、重力の方向を感じるセンサーがあります。火星ではその入力が弱くなりますので、わずかな揺らぎを与えて、脳が『重力の方向はここだ』と自然に認識できるようにします。
そして、もう一つ大切なことがあります。それは、細胞を 1G だと錯覚させることです。細胞は、重力が弱いと“自分が置かれている環境が変わった”と判断してしまいます。その結果、骨芽細胞は働かなくなり、筋細胞は萎縮し、血管の調整機能も弱まります。
そこで、私たちのシステムでは、細胞の膜に伝わる微細な圧力や張力を再現し、細胞が『これは地球と同じ環境だ』と感じるようにします。これは、細胞の“機械受容”と呼ばれる仕組みを利用したものです。言い換えるならば、私たちが開発しています装置による重力補正は、重力そのものを作るのではなく、脳と細胞が『これは 1G だ』と自然に錯覚する環境を作る技術なんです。
これらの技術を盛り込んだ、私たちが開発中のシステムは「Terra‑Sphere System」、略して「TSS」、日本語で言うならば 「地球生命圏の球体を火星で再現するシステム」というふうに命名しました。先ほど紹介しました重力補正以外に、大気の供給や補正、磁場や電磁場の補正、光を含めた電磁波の補正、音や超音波環境の補正など、地球上でも最も理想的であると考えられる場所の環境を再現するようにしています。
そして、この技術を少しだけ形を変えて、地球で火星環境を体験するための装置として、M‑HIM というものを考案・開発しました。これは、Mars Habitat Immersive Moduleの頭文字をとった呼び方です。強いて日本語で言えば、“火星環境没入モジュール”ということになります。
なお、この装置は、共同研究している大学のほうに設置していまして、既に何名かの方に体験していただいています。
ちなみに、M-HIMは、火星の低重力を体験できるだけでなく、壁にも様々な工夫を凝らしていますので、視覚的にも火星に居るような、或いは、火星の居住区に居るような景色も再現することができます。…なお、このあたりの面白いお話は、また後ほどお紹介しますね。
――聴衆の様子(みのり/高木先生)――
あかりさんの話は、まだまだ続くのであるが、この段階での聴衆の様子をお伝えしておくことにする。
みのりは、高校での土曜日の講座が終り、お昼ご飯を食べないまま、すぐに図書館のホールに向かった。一刻も早く、あかりさんの近くに行きたかったのである。12:50ぐらいに図書館に到着したが、もうそのときには、溢れるほどの人が押し寄せていた。並んでいる人の後尾について15分ほどかけてホールの扉の所にたどり着いた時、スタッフの人が、「ここの最前列の席が1席だけ空いているようですね、行きましょう!」と言って案内してくれた。みのりの気持ちが天に伝わったのか、かなりラッキーな席の確保であった。
あかりさんが話している間、みのりは、息をするのも忘れたように前を見つめていた。
(……あかりさん… あのような凄い人と…この私が知り合えたなんて…。……あかりさんは…こんな大勢の人たちの前で… いつものように優しく、鋭く…、…そして…かなり難しそうなことを話しても、そのようには感じさせない…)
(……あっ、M-HIM… 私も体験させてもらった。……信じられないぐらい、本当の火星だった。 …そしてあれは…火星に設置する装置の地球版だったんだ…)
みのりは、あかりさんの話から、その全てを吸収している様子だった。
少し離れた場所では、高木先生が立ち見で聞いていた。みのりが最前列に座っていることは、まだ知らなかった。
(……水瀬あかりさん… やはり…凄い人だ… 火星に設置する装置を開発… その地球バージョンが出来上がっている… 少なくとも、物理の広い分野の知識や、工学の知識がないと作れないし、人の体のしくみ…細胞レベルの仕組みも知らなければ、そんなアイデアさえ出てこないはず… いや、一人の人間が… ……最近は佐伯の件で驚いていたが… 水瀬さんの…この異次元さは… ありえない…)
高木は、以前にあかりさんに出会った時の何倍もの大きな衝撃を受けていた。
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