スギ花粉の季節が本番となってきました。なお、花粉症を主テーマとした記事はこれが2つ目で、昨年の3月には『花粉症を抑えるのも酪酸産生菌』をupしました。これは、言わば根本的な対策であり、現代人が各種のアレルギーに罹りやすくなっている原因を解消していこうとする対策になります。
一方、今回の記事は、上記の対策に加えて日常的に実施することによって、医薬品に頼りきりになっている状態から、医薬品にあまり頼らなくても済む状態にまで改善していくための方法になります。更には、医薬品を使えば使うほど副作用によるデメリットが顕在化してくるわけですが、これから紹介する方法を用いれば全身的に健康度が増すことになります。そして、その方法とは、タイトルに示しましたように、メチル化カテキンを日常的に摂取することです。
カテキンのうち、緑茶に含まれるエピガロカテキン-3-ガレート(EGCG)につきましては、このブログにおいては新型コロナウイルスやインフルエンザイウルスなどに対する抗ウイルス作用、ホルモン性のがんなどに対する抗がん作用、亜鉛不足を解消するための亜鉛トランスポーターの賦活作用、アンチエイジングのための抗酸化作用などを紹介しましたが、まだまだ紹介すべき他の生理作用が沢山あります。
更に、緑茶にはEGCG以外のカテキンや、カテキン以外の有効成分も色々と含まれていますので、緑茶はまさしく日常的に用いることができる、この世で最も優れた万能薬であると言うことができます。
さて、今回ご紹介しますのは、EGCGの分子にメチル基が結合した〝メチル化カテキン〟であり、具体的には〝エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート〟というもので、略して〝EGCG3″Me〟と表記されるものです。因みに、メチル基の位置が異なっている〝EGCG4″Me〟もあるのですが、日本産の茶では前者が主になっています。
このメチル化カテキンは、全てのお茶に含まれているのかというと、そうではないのです。掲載した図(高画質PDFはこちら)の中央右寄り上段に棒グラフを引用させていただきましたが、「べにふうき(紅富貴)」という栽培品種に特に多く含まれているのですが、一般に多く飲まれている「やぶきた」には含まれていない、ということです。もちろん、「やぶきた」にもEGCGは含まれているのですが、メチル化されたEGCG、即ちEGCG3″Meが含まれていないということです。
では、EGCGとEGCG3″Meは、生理的効果としてどのように違うのかについてですが、今回は花粉症を主テーマにしていますので、それに関する比較をしてみたいと思います。
先ずは、動物実験の結果ですが、掲載した図の左寄り下段に、マウスによるⅠ型アレルギー(花粉症はこれに該当する)に対する影響の比較が示されています。なお、EGCGとEGCG3″Meの経口投与量は体重1kgあたり、EGCGについては10、50、100mgの投与になっていますが、EGCG3″Meでは、更に少ない投与量を設定し、5、10、50mgとなっています。そして、グラフの縦軸はアレルギー抑制率(%)です。
その結果、両者の10mg/kg(茶色のバー)と50mg/kg(黄緑色のバー)とで比較してみると、EGCG3″Meのほうが、EGCGに比べて3倍程度高い効果を示すことが分かります。
メチル基の有る無しで有効性が変わる理由としては、この研究者たちは吸収性の違いだと述べています。一般的に、何らかの化合物にメチル基が付加した場合は疎水性が高まりますので、その化合物は組織内へ潜り込みやすくなると考えられます。
ただ、掲載した図の左端に描かれている作用機序のように、作用する部位に到達してしまえば、EGCGもEGCG3″Meと同様のメカニズムにてヒスタミン遊離抑制作用を示すとの見解になっています。言い換えれば、EGCG3″Meを多く含む「べにふうき」を摂取すれば少量にて高い効果が発揮されるのですが、EGCG3″Meを含まずEGCGを含むお茶を摂取することによっても、それなりの効果は期待できることになります。
ヒトでの実験も行われていて、代表的な結果を3種類引用させていただきました。その中で、図の右上のグラフは、EGCG3″Meを含まない「やぶきた」と、EGCG3″Meを多く含む「べにふうき」との比較実験の結果で、「鼻かみ回数」をスコア化して縦軸に採っています。横軸には、各お茶を飲み始めてからの経過時間(週)が採られています。
お茶を飲み始めたのは、スギ花粉が多量に飛散を始める約9週間前からで、「べにふうき」の緑茶を飲んでいた人の方が「鼻かみ回数」が少なく、花粉飛散量が多くなった時にも「鼻かみ回数」が比較的少なかったことが分かります。要するに、他の緑茶よりも「べにふうき」の緑茶を飲んだ人のほうが「鼻かみ回数」が減るということです。
また、他の飲用パターンによる実験も行われていて、花粉が多く飛び始めてからお茶を飲む人と、花粉が飛ぶ約6週間前からお茶を飲む人との比較が行われました。
その結果が図の右下なのですが、そのうちの左側のグラフは上記と同様の「鼻かみ回数」を調べたもので、想像できるように、6週間前からお茶(べにふうき)を飲み始めた人の方が、鼻かみ回数が減りました。
右側のグラフは、花粉症による「咽頭痛」がスコア化されて縦軸に採られています。これにおいては、花粉が飛ぶ6週間前からお茶(べにふうき)の緑茶を飲んでいた場合、花粉が飛び始めてから飲んだ人に比べて、咽頭痛の有意な減少が見られました。
両データを概観するならば、花粉が飛び始めてから飲むよりも、6週間以上前から「べにふうき」のお茶飲んでおく方が、その抗アレルギー効果は一層高まる、ということになります。
「べにふうき」はネットショップでも非常に多くの商品が販売されていますので、花粉症で未だ飲まれていない方は、ぜひ試して頂ければと思います。
また、飲み方についてですが、多くの研究ではオーソドックスな方法で「お茶を入れて」飲むようにしていますが、EGCGよりもEGCG3″Meの方が水溶性が低いので、通常のお茶の入れ方をすると抽出効率が良くないのです。その場合、抽出されなかった大半のEGCG3″Meは、茶葉と一緒に捨てられてしまうことになります。
従いまして、私はどの場合にも、お茶用のミルで粉にし、その適当量を取ってカップに入れ、そこに水を加えて撹拌し、抹茶のようにして丸呑みしています。カテキン類が多く入っているほど苦いわけですが、ミルで挽いた粉が大きければあまり苦くなく、消化管の中で徐々にEGCG3″Meが遊離していくことになります。