慢性的な酷い疲労を解消するためのファイトケミカル

慢性的な酷い疲労を解消するためのファイトケミカル

 今回は、〝疲労〟のなかでも〝慢性的な酷い疲労〟を解消するために摂るべき物質について、見ていくことにします。なお、充分な休息や睡眠を取ることはもちろん重要なのですが、それだけでは解消しきれない場合、栄養素や機能性物質にも目を向けることが必要になってきます。

 掲載した図(高画質PDFはこちら)の左端に「通常の疲労」と「病的な疲労」の主な内容が示されています。
 「通常の疲労」で特徴となるのは、エネルギー損失、酸化ストレス、グリコーゲン貯蔵量の減少、代謝物の蓄積、5-HT/DA(セロトニン/ドーパミン)比の上昇、などであることが示されています。個々の説明は割愛させていただきますが、これらは疲れた場合にごく普通に生じる現象だということです。

 その下段に示されている「病的な疲労」で特徴となるのは、炎症、HPA軸の機能低下、治療の副作用、筋肉の変化、代謝、などであることが示されています。これらにつきましては少しだけ説明を加えておきます。
 炎症は、必要な場合に必要な程度で起こることが理想ですが、強い炎症が長引いている場合は、何らかの病的な原因が体内にあるということですから、それが解消されない限りは、体は爽快な状態に戻ることは出来ません。即ち、その炎症によって疲労が継続することになります。従いまして、その炎症を解消してやらない限り、疲労も解消されないことになります。
 HPA軸の機能低下と言いますのは、視床下部、下垂体、副腎の3つの器官の連動が、理想的な状態で機能していないことを指しています。その結果、ストレス反応が正しく行われず、ストレスに押しつぶされてしまうことになり、疲労が継続することになります。
 治療の副作用と言いますのは、何らかの病気やケガを治すために受けた治療に伴う副作用で、それが疲労の原因になっているということです。
 筋肉の変化とは、骨格筋であったり、内臓の平滑筋であったりしますが、多くはそれらの筋肉量の減少や筋力低下が主となります。そのため、すぐに筋疲労を起こしてしまうことになるわけです。
 代謝は、様々な代謝が考えられますが、大きなレベルでは肝臓や腎臓など、臓器の機能低下が代謝を不完全してしまうため、体内成分のバランス異常、代謝産物の蓄積、必要成分の合成不足などが生じ、それが疲労の原因になります。

 結局、「通常の疲労」であれば、休息や睡眠を充分に取り、必要な栄養素を摂り、精神状態を快活な状態にしておけば、長引いたとしても1週間もすれば解消されるでしょう。ところが、「病的な疲労」は、その原因を作っている上記の原因を解決しない限り、疲労の解消に至らないと考えられます。

 そこで、是非とも追加摂取すべきなのが、図の右側に挙げられているファイトケミカル(植物由来の物質)です。これらのファイトケミカルは、〝抗疲労〟作用を示すことが実証されているもので、その左側に描かれている〝抗疲労の機序に関わる各種の因子〟を介して作用を発揮することになります。
 なお、これらのファイトケミカルの中には、私がこのブログにて何度も登場させているものもありますし、そうかと思えば、日本では試薬レベルで販売されていて、安易に高用量にすると思わぬ副作用を生じるものもあります。そこで、「特にお勧めのファイトケミカル」として、図の右下に4種類を挙げておきましたが、詳細は次のようです。

 お勧めNo.1は、〝ケルセチン〟です。これは、サプリメントとしても売られていますし、その他にはタマネギの皮、チャ葉(お茶)、ドクダミ、ネトル、ギシギシ、松葉などにも多く含まれています。これらは、個別の記事として既にupしているのですが、その記事内には、ケルセチンの抗疲労以外の様々な効果を紹介しています(抗がん(がん細胞の細胞周期停止、がん細胞内のオートファジー誘導、アポトーシスの誘導、転移の抑制、血管新生の阻害、NK細胞の賦活)、抗循環器疾患(血管の保護、毛細血管や血管内皮の強化、血圧の正常化、動脈硬化の予防、心筋梗塞の予防、血管弛緩、腎機能の改善)、抗老化(老化細胞除去、AMPの活性化、NAD合成酵素の賦活、抗酸化、肌の保湿、弾力性向上、認知機能の維持)、その他(脂肪分解促進、抗肥満、抗炎症、抗ウイルス、肝障害の改善、水晶体の硬化防止、亜鉛トランスポーターの賦活など))。今回の記事で「抗疲労効果もあるのか…」と思っていただければ結構です。ケルセチンは、まさしく万能な、神の恵みであると言えます。

 No.2は〝レスベラトロール〟です。これもサプリメントとしても売られていますし、別記事として既にupしていますように、赤ブドウだけでなく、イタドリの根に多く含まれています。レスベラトロールの効果は、抗疲労以外には、抗酸化、抗炎症、抗アポトーシス、オートファジー促進、アミロイドβの分解、緑内障や変形性関節症の改善/予防、腎機能改善、心血管保護、神経保護/改善/再生、女性ホルモン様作用、抗老化、抗腫瘍、その他種々の健康効果、ということになります。

 No.3は〝ウルソール酸〟です。既にupしている記事で〝AGEs(終末糖化産物)〟の生成を阻害する物質の一つとして紹介しているのですが、今回の記事では〝抗疲労効果〟を付け足すことになります。ウルソール酸が多く含まれているものは、リンゴの皮、柿のヘタ、各種ハーブ(バジル、ローズマリー、ペパーミント、タイム、オレガノ、ラベンダーなど)などであり、このようなものから適量を摂ることが最適であると考えられます。

 No.4は、〝没食子酸(もっしょくしさん or ぼっしょくしさん)〟であり、これはチャ葉(お茶)から適量を摂ることが最適であると考えられます。その他、緑茶に含まれる〝テアニン〟や〝EGCG〟にも抗疲労効果のあることが確認されています。

 なお、追加情報として、疲労回復のために摂るべきであるとされている一般的な物質を挙げておきます。それは即ち、ビタミンB群(B1,B2,B6)、ビタミンC、コエンザイムQ10、クエン酸、イミダゾールジペプチド、タウリン、BCAA、アスパラギン酸、マグネシウム、鉄 などです。これらに関する情報はWeb上に氾濫していますから、この記事では割愛させていただきます。

 以上のように、病的な疲労を含む慢性的な酷い疲労を解消するためには、上記のようなファイトケミカルの摂取を試みていただければ結構だということになります。

 
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