理想的な環境を与えなければ脳力は高まらない

理想的な環境を与えなければ脳力は高まらない
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今回のアイキャッチ画像(高解像度版)
佐伯みのり
◆ 第52話 ── 脳磁図が捉えた更なる進化

◆ 高原教授・佐野教授の打ち合わせ
夕方、佐野教授が高原研究室に来て、高原教授と打ち合わせをしていた。

「佐野先生…、やはり、この問題を避けて通るわけにはいきませんね…」

「そうですね。先天的か…後天的か…。その線引きを、もっと正確にしておきたいですね。論文として説得力を持たせるためにも…」

高原教授は、モニターに映る波形を見つめて言った。
「この広域同期は、先天的な素質だけでは、もちろん説明できない。さらに、DMNの立ち上がり方、前頭前野の未来予測領域の活動、意味処理の効率、感情系との同期… これらの複数の変化の、何割ほどが後天的なものなのか……それを、もっと精密に推定したい」

「……追加データが欲しいですね。あれから1か月…。さらに変化があれば……その差分は完全に後天的ですね」

高原教授は、気持ちを固めた。
「じゃ、みのりさんにお願いして、もう一度MEGを測定しましょう。現時点での脳活動を見れば、この1か月間で新たに強化されたネットワークは、すべて後天的な可塑性によるものだと判断できます。その差分を解析すれば、先天的に働いていたネットワークの推定も可能になるはずです」

佐野教授は、少し考えてから言った。
「……高校は、夏休み期間が終わっていますので、授業時間を使わせてもらう必要がありますね。高木先生の授業が無い曜日と時間帯なら、高木先生にも協力いただけるでしょうし…」

高原教授は、スマホを手に取った。
「まず、高木君に連絡してみますね」
そう言って、メッセージにて要件を発信した。

数分後、高木から返信が来た。
高原教授は画面を確認し、ほっとしたように息をついた。
「高木君、協力してくれるそうです。みのりさんを大学まで連れてきてくれるとのことです」

佐野教授は頷いた。
「良かったですね。では、日程はどうしましょうか…」

「高木君の都合も聞きました。直近で言うと、明日の午後なら大学に来られるそうです。みのりさんにも、そのように伝えてくれるとのことです。…で、佐野先生のほうも、明日の午後で大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。院生の桐谷君にも、準備をお願いしておきます」

教授たちの目は、再び輝きを増した。
(……この1か月で変わった部分があれば、それは完全に後天的…… 教育でどこまで脳機能を高められるか──その答えが見えるかもしれない……)

◆ 高木先生からみのりへ
その日の夕方、みのりが学校から帰宅したとき、高木先生からのメッセージが届いた。
『佐伯さん。明日の午後、大学の先生方が、脳活動の追加測定をしたいそうです。私が車で送りますので、午後の授業が始まる時間に、職員室前に来てくださいね』

みのりは、ちょっと驚いたが、高2の段階で大学の研究室に出入りする可能性のあることを聞いていたので、予定通りだとも思った。
(……前回の測定から1か月ほど経つし…… PSMと速読トレーニングの効果も見られるといいな…)

みのりは、短く返信した。
『はい、わかりました。先生、いつもありがとうございます』

◆ 翌朝の学校
翌朝のショートホームルームの時間、担任の先生が教卓の前に立ち、出席簿を閉じてから、少しだけ柔らかい声で言った。
「えーと、みなさんに一つ伝えておきます。佐伯さんは、今日の午後、高木先生と一緒に大学へ行きますので、授業を途中で抜けますが、心配しないようにお願いしますね」

教室の空気が、一瞬だけ止まった。
次の瞬間──ざわっ、と小さな波が広がった。
「え?大学?」
「何しに?」
「もう進学の話?」
「え、佐伯さんって推薦もう決まってるの?」
席のあちこちで、声が小さく弾んだ。高校2年生のこの時期、大学という言葉は、それだけで空気を敏感にさせた。

みのりは、少しだけ肩をすくめた。
(……やっぱり、こうなるよね……)

担任の先生は、軽く笑って言った。
「詳しいことを聞きたくても、佐伯さんに直接聞かないようにお願いします。学校として把握している範囲では、学外の先生方との協力が必要な“特別な活動”です。佐伯さんが困るような詮索はしないようにお願いします」

その言い方が、逆にクラスの皆の好奇心を刺激してしまった。
「特別な活動って何?」
「え、すごくない?」
「高木先生と大学って、なんか本格的じゃん」
「…佐伯さんって…何者…?」

みのりは、机の上の教科書をそっと閉じた。
(……どうしよう……)
ただ、胸の奥は不思議と落ち着いていた。
(……午後には大学に行くし……測定もあるし…… あかりさんが見守ってくれてるし……大丈夫……)

間もなく、1時限目の英語の先生が入ってきて、普通に授業が始まり、普通に終わって、休み時間に入った。

隣の席の女子生徒が、少し大きめの声で言った。
「ね、佐伯さん。私たち、詮索したりしないから… 安心してっ!」

その後ろの席の男子も続いた。
「うん、先生もそう言ってたし…。少なくとも、俺は佐伯さんを全力で守る!!」

その後ろの女子がすぐに反応し、その後も他の生徒が連鎖的に続いた。
「…もう、そういう場合の頭の回転、めっちゃ速い」
「だってさぁ、もうすでに大スターなんだから… ボディガードいるでしょう」
「じゃ、俺もボディーガード、買って出る」
「えー、そういうことを、私には言ってくれないの?(笑)」
「わかったよ、二人とも守ってやる(笑)」
「えーっ、勉強、手につかなくなるよ」
「でもね、佐伯さんのそばにいると、頭冴えるんだよ」
「あっ、それ言える。不思議だね…」
「だったら、佐伯さんいなくなる午後、悲惨だね…」
「うん、確かに…」

みのりは、言葉を挟む余地がなく、ただ、ちょっと恥ずかしそうに、うつむき加減で笑っていた。

2時限目の授業も終わり、昼休みも終わった。
みのりは「じゃ、行ってくるね」と小さく言って、カバンを肩にかけた。
クラスの何人かが、名残惜しそうに手を振った。
「気をつけてねー」
「帰ってきたら、また話聞かせてよ」
「午後いないと、ほんとに頭回らなくなるんだけど(笑)」

みのりは、少し恥ずかしそうに笑いながら教室を出た。そして、胸の奥の小さな緊張を抱えながら、職員室へ向かって歩いた。
(……大学…… また測定…… どんな結果になるんだろう……)

職員室の前に着くと、扉の向こうから高木先生の声が聞こえた。
「あっ、佐伯さん…」
扉が開き、高木先生が出てきた。
「じゃあ、行こうか」

みのりは、軽く頭を下げた。
「はい。よろしくお願いします」

高木は、みのりを乗せて大学に向かう途中、高原教授から聞いていたことを話した。
「高原先生からの伝言なんだけど、前の日に言ってしまうと、佐伯が練習しなきゃとか思って、それに時間を奪われるかもしれないので、直前に言ってくれって言われたんだ」

みのりは、運転席の高木のほうを見た。
高木は続けた。
「今日の測定は、前回と同じように、キーボードを使って、楽譜どおりの演奏と、アドリブの演奏をしてほしいそうだよ」

みのりは、ほっとしたように頷いた。
「あっ、そうなんですね。前回と同じなら、安心です。今日は違うことをするのかと思って、ちょっと緊張してました」

高木も、ほっとした。
「…よかった(笑)そのような返事が返ってきて…」

「あっ、そうなんですね(笑)」

「うん。それで、前回と同じことをやった時の、佐伯の脳活動が、1か月前に比べてどう変化したのかを調べたいそうなんだ。……そういえば… 夏休み明けの最初の化学の授業のあと、江藤先生が額に脂汗かいて、呆然とした様子で職員室に戻ってきたんだよ」

「えっ? そうだったんですか… 何があったんですか?」

「佐伯、君の答えが素晴らしすぎたんだよ。江藤先生でも答えられないような的確な答えが返って来たって…。そして、佐伯は夏休み前よりもさらにパワーアップしていたって…」

「……あぁ、化学反応速度の授業で……  あっ、先生! 最近、私、あかりさんから、揺らぐ光の出る装置をもらったんです」

「えっ!? なにそれ…」

「それを点けて本を読んでいると、すごく速く読めるし、速く読んでも内容がすっと頭に入ってくるんです」

「えーーっ。そんな装置まで、あかりさんにもらった…」

「それで、自分でも頑張らなければと思って、速読のトレーニングやってるんです。初めてからまだ3日しかたってないですけど、専門書のページをパッと開いて、サーっと見渡すと、その内容が頭に入るようになったんです」

高木はさすがに驚いた。
「…ええっ! 君は、さらに凄くなるのか…」

そんな話をしているうちに、車は大学の門をくぐった。

◆ 高原教授・佐野教授との再会
高木とみのりは、高原研究室の前に到着し、高木がドアをノックした。
「どうぞー」
中から聞こえた声に、高木はドアをそっと開けた。
「失礼しま~す」

高原教授と佐野教授が、モニターの前で資料を確認していた。2人とも、みのりたちの姿を見ると、表情がふっと和らいだ。
「佐伯さん。来てくれてありがとうね。高木君も、忙しいのに、ありがとう」

みのりは軽く会釈した。
「お世話になります。よろしくお願いします」

佐野教授も、穏やかな声で続けた。
「今日は、前回の測定からの変化を見たいのですが、同様の測定をするだけですので、安心してくださいね」

みのりは、少し緊張しながらも頷いた。
(……教授たち、優しい……)

高原教授は、にこやかに言った。
「では、早速ですが、測定室へ向かいましょうか…」

MEG室の前には、白衣姿の桐谷院生が待っていて、みのりたちの姿を見ると、笑顔で会釈した。
「佐伯さん。お久しぶりです。準備できてますので、すぐ始めましょう」

みのりは、少しだけ緊張が解けたように微笑んだ。
「よろしくお願いします」

みのりは、ゆっくりとMEG室へ足を踏み入れた。

◆ MEG測定
MEG室の防磁扉が閉まり、測定が始まった。
みのりは、前回と同じようにキーボードの前に座り、楽譜どおりの演奏を淡々とこなした。演奏は安定していて、指の動きも迷いがなかった。

観察室では、佐野教授が静かにモニターを見つめていた。
「……再現系ネットワーク、前回よりも滑らかですね。視覚・運動・聴覚の同期が、より整っています」

高原教授も頷いた。
「ノイズが減っていますね。テンポ維持の前頭前野も、負荷が少ない。……効率が上がっている」

楽譜演奏は短く終わり、続いてアドリブ演奏が始まった。
みのりの指が自由に動き出した瞬間、モニターの色が一気に変わった。

佐野教授は、思わず息を呑んだ。
「……強い。DMNの立ち上がりが、前回よりも明らかに速い。未来予測も同時に走っている……1か月でここまで変化するものなのか…」

高原教授は、画面を指しながら言った。
「意味処理、感情、身体表現…… 広域同期の範囲が広がっています。創造系ネットワークの“結合力”が、前回よりも強い」

桐谷は、驚きの声を押し殺した。
「……こんなに変わるんですね…… 1か月で、ここまで……」

みのりの演奏が終わり、防磁扉がゆっくりと開いた。

◆ 観察室に戻って
みのりが観察室に戻ると、教授たちはモニターの前で並んでいた。二人とも、表情は落ち着いているのに、目だけが鋭かった。

佐野教授が口を開いた。
「佐伯さん。前回と同じ条件で測定しましたが…… この1か月で、創造系ネットワークが確実に強化されています」

みのりは、少し驚いたように目を瞬いた。
「……そんなに変わってるんですか…?」

高原教授は、静かに頷いた。
「DMNの立ち上がりの速さ、広域同期の範囲、未来予測の強さ…… どれも、前回よりも高いレベルです。これは、後天的な可塑性による変化だと判断できます」

佐野教授は、みのりの方へ向き直った。
「佐伯さん。ひとつだけ確認したいことがあります。この1か月間で、以前とは違う取り組みや習慣を始めたことはありますか? 勉強の仕方でも、生活のリズムでも、何でも構いません」

みのりは、少し考えてから口を開いた。
「……はい。夏休み期間でしたから、けっこう自由に好きな勉強ができました。…あと…あかりさんから“揺らぐ光の出る装置”をいただきました。それを点けて本を読むと、すごく速く読めるようになったんです。それで、自分でも頑張らないとと思って、速読のトレーニングを始めました。まだ3日くらいですけど……専門書のページをパッと開いて、サーっと見渡すと、内容がすっと頭に入るようになってきて……」

その話を聞き、高原教授も、佐野教授も、桐谷も大層驚いた。
(……専門書を速読?!…… …サーっと見渡すだけで… 内容がすっと頭に入る…… …な…なんてことだ…)
(……専門書は、速読が最も成立しない領域だ…… それを“見渡すだけで理解”とは…… これは、もはや教育効果の範囲を超えている……)
(……だったら… 高校の教科書など… ページをめくった瞬間に…すべて理解できる…?!)

佐野教授は、みのりの話を最後まで聞くと、タブレットの画面をゆっくりとスクロールしながら、深く息を吸った。
「……なるほど。この1か月で起きた“脳の強化”の理由が、ようやくつながりました」

◆ 先天/後天の割合の推定
高原教授も、モニターを見つめながら頷いた。
「では…、今回の測定で得られた“差分”をもとに、先天的なネットワークと、後天的に強化されたネットワークの割合を、推定してみましょうか」

みのりは、少し緊張したように背筋を伸ばした。

佐野教授は、画面を指しながら説明を始めた。
「まず、再現系ネットワーク。楽譜どおりの演奏のほうですが、ここは“先天的な基盤”がほとんどです。視覚・運動・聴覚の同期は、前回と同じ構造で、ノイズが減った程度。これは、後天的な練習による微細な改善ですね」

高原教授が補足した。
「つまり、再現系は“ほぼ先天”。強化された部分は、せいぜい一割程度でしょう」

みのりは静かに頷いた。

佐野教授は、画面を切り替えた。そこには、アドリブ演奏中の脳活動が映っていた。
「問題は、こちらです」

画面には、色が深く広がり、複数のネットワークが同時に同期している様子が示されていた。
「創造系ネットワーク──DMN、未来予測、意味処理、感情、身体表現――これらが同時に強く働く状態ですが、今回の測定では、前回よりも明らかに強化されています」

高原教授は、少し声を落として言った。
「DMNの立ち上がりの速さは、前回の約1.4倍。広域同期の範囲は、前回よりも20〜25%ほど広い。未来予測の強度も、明らかに増している」

佐野教授は、タブレットを閉じて、みのりの方へ向き直った。
「結論を言いますね。佐伯さんの“創造系ネットワーク”は… …おそらく、先天が6割、後天が4割です」

みのりは、少し戸惑ったように瞬きをした。
「……それは、どういうことなんでしょうか…?」

佐野教授は、みのりの反応に優しく頷いた。
「難しい言い方をしてしまいましたね。つまり、あなたの脳には、生まれつき“創造の基盤”があるんです。ただし、前回の測定の時点で、すでに通常とは違う“強化の兆候”が見えていました」

みのりは、少し驚いたように目を向けた。
「……強化の兆候…?」

高原教授が、静かに補足した。
「ええ。前回は、安静時にもかかわらず、視覚化ネットワークと数量処理領域が同時に動くという、通常では説明できない“統合状態”が確認されました。脳幹の同期も、一般的な人ではまず見られないものでした」

佐野教授は、タブレットを指しながら続けた。
「その“基盤の強化”が、前回の測定で見えた部分です。ただ、当時はその理由が分かりませんでした。何らかの外的要因が働いた可能性も考えましたが、確証はありませんでした」

みのりは静かに聞いていた。

高原教授は、今回のデータを示しながら言った。
「そして今回、この1か月でさらに強化された部分は、あなた自身が積み重ねてきた学びによるものだと判断できます。自由に好きな勉強ができたと佐伯さんは言いましたが、私が補足をしておくならば、佐伯さんは来春からうちの大学への入学が既に決定していますので、入学試験はありません。だからこそ、受験勉強という非創造的な勉強スタイルから逃れ、自由に思うがままに好きな勉強に集中できた。これに、最近始めた速読のトレーニングと、それに必要な高速な意味処理… そのようなものが、創造系ネットワークを確実に押し上げているのだと言えます」

みのりは思った。
(……いや… もう… ぜんぶ、あかりさんのおかげ……)

高原教授は、少し声を落として言葉を足した。
「佐伯さん。あなたの脳は、先天的に優れているだけではありません。“後天的に伸びる余地”が、驚くほど大きいんです。そして、実際に伸びている。これまでに、水瀬さんと共に、あなたがしてきたことは、脳科学や教育の世界にとって、非常に大きな意味を持つはずです」

★ 解説コラム――本当に脳を成長させたいのなら
現代の日本で暮らす多くの人は、「努力すれば成長できる」と信じて、日々頑張っている。子どもたちもまた、与えられた環境の中で、自分なりに成長しようと懸命に取り組んでいる。佐伯みのりも、その一人だった。水瀬あかりに出会うまでは、努力しているのに、思うように捗らない。理解したいのに、頭が重い。伸びたいのに、伸びない。それは、脳が成長するために必要な環境が与えられていなかったからである。脳の成長には、「物理的な環境」と「社会的な環境」の両方が必要なのである。

現代の日本の受験勉強は、創造性を高めるという観点から見ると、決して理想的とは言えない。受験で問われる内容は、社会に出てからほとんど使わない知識が多く、その達成度を測るための試験は、AI時代に必要な創造性や社会性を育てる方向とは、しばしばズレてしまう。「覚えること」が中心になり、「考えること」や「創造すること」が後回しになる。その結果、教育によって本来伸ばさなければならない脳のネットワークが、十分に使われないまま、眠ってしまうのである。

みのりは、あかりに出会い、その“眠っていた領域”が目覚め始めた。まず、LifeSignal Generator(LSG;生命信号発生装置)による脳幹の安定化が起こった。脳幹の基準振動子が整うことで、覚醒・注意・情動・自律神経のリズムが安定し、脳全体が「安全に高効率で働ける状態」へと近づいた。

次に、PhytoCore(フィトンチッド放散装置)による前頭前野の負荷軽減が起こった。ストレスホルモンが下がり、過剰な緊張が解け、“考えすぎ”のブレーキが外れたことで、創造系ネットワークが立ち上がりやすくなった。

そこに、PhotoSignal Modulator(PSM;揺らぎを再構成する光源ユニット)の光による脳幹の、さらなる安定が加わり、脳のノイズが減り、広域同期が起こりやすくなった。さらに、PSMの光の下での抽象化の訓練が、意味処理・未来予測・概念統合のネットワークを鍛えた。また、速読による意味処理の高速化は、視覚化ネットワークと意味処理ネットワークの同時活性を促し、情報処理の“速度”と“深さ”を両立させた。

そして何より、受験勉強から解放され、自由に好きな学びができる環境が、DMN(創造系ネットワーク)を毎日立ち上げ、創造性の伸長を強く後押しした。
これらが重なり、みのりの脳は「本来の姿」に近づいていったのである。

今回のMEG測定で教授たちが見たのは、まさにその“変化の証拠”である。環境は、脳を変える。教育は、脳を変える。学び方は、脳を変える。そして、真に正しい環境が与えられたとき、脳は想像を超えて伸びるのである。

佐伯みのりに与えられた環境は、その意味で、非常に理想に近いものだと言える。彼女の脳が示した変化は、「教育でどこまで脳機能を高められるか」という問いに対して、ひとつの明確な答えを提示している。

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