研究開発室に足りなかったもの

研究開発室に足りなかったもの
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◆ 第46話 ── あかりから届いた二つの装置

★ 解説コラム――現代における電子機器類の開発手順
現代の電子機器の開発において、まず行われるのは“原理試作”と呼ばれるもので、これは最小限の機能を確認するための簡易モデルの製作である。

原理試作で必要なのは「この原理で本当に動くか」「この構造で信号が正しく流れるか」という確認だけである。そのため、試作機は既存の基板や汎用部品を組み合わせて、できるだけ短時間で組み立てる。足りない部品があったとしても、使えそうな汎用部品を入手することによって、基本的な動作の確認を行う。

特に近年の研究開発では、ラピッドプロトタイピングが一般的であり、「まず作って、すぐ試す」ことが重視される。即ち、図面 → 試作 → 検証 → 修正 → 再設計 → 再試作 → 再検証 という高速の反復ループを何度も回すことで、装置は少しずつ完成形に近づいていくことになる。

このように、機器類の研究開発は、試作と検証を繰り返しながら、一歩ずつ完成形へと収束させていくという、地道な作業になるのが普通である。何らかの新奇な製品を手にしたとき、そのような忍耐と努力の結晶であることを感じ取ってもらいたい。

◆ 翌朝の研究開発部
研究開発室の部長・山本は、いつもより少し早く出社した。少しぐらい早く出社したところで、仕事の進度は大きく変わらないことは、百も承知だった。しかし、一刻も早く図面や試作機に向かいたい、という気持ちの現われであった。

山本が席に着こうとしたとき、研究開発室のドアが開いた。
「おはようございます」「おはようございます!」
見ると、中村と大野であった。

「わぁ、早いじゃないか…。どうしたというんだ…」
山本は、ちょっと驚きながら2人を見た。

中村も、ちょっと驚きながら答えた。
「いや、部長こそ… こんなに早くから…」

山本は、少し照れた様子で言い訳をした。
「…なんかね… 家の時計が進んでたようなんだ…」

大野が笑いながら言った。
「まさか… 部長宅の電波時計が狂うなんて、ありえないですよ!」

3人に笑顔がこぼれた。
しかし笑顔も束の間、3人は真顔に戻った。そして、各種の図面が所狭しと重なり合ったテーブルに目が行った。

「……さて。どこから手をつけるか… …もう一度整理しよう」

「そうですね」
中村は言った。
「……昨日、帰ってからもずっと考えてたんですが…… どうしても“揺らぎだけを扱う系統”という意味が理解できなくて…… 音量変化が混ざると、全部が崩れてしまうんです」

大野が言った。
「非可聴音の系統は…… 倍音展開を広げると、空間が不安定になる理由が分からないんです。基礎波が弱いのか、展開が広すぎるのか…… どちらも試したんですけど、どちらも違う気がするんです」

山本も、冴えない顔つきで言った。
「脳波誘導は…… 補正量を変えても周期が乱れる。“内部構造に作用する補正”という言葉の意味が、どうしても掴めない……」

3人は、再び図面を見つめた。ただ、図面上で、どこをどう変更すればよいのかが分からなかった。そこで3人は、試作機のほうで色々と設定を変えながら、結果を再確認する作業をすることにした。

設定を変えたが、やはり、波形が乱れた。また設定を変えたが、また別の乱れ方をした。その繰り返しが延々と続き、時間だけが刻々と過ぎていった。

大野は、試作機の前で肩を落とした。
「……倍音展開の広げ方…… 昨日のままじゃダメなのは分かるんですが…… どう変えればいいのかが分からないです。もっと細かく刻んで試します。どこかに安定するポイントがあるはずです」

中村は、もう一度図面に向かうことにした。
「……もう一度、最初から見直します。昨日の理解が間違っていた可能性があります」

山本は、録音を再生した。
『ローパスで大まかな揺らぎを取り出し、微分で変化の方向を捉えます……』
「……あかりさんの言葉には…必ず“意味がある”…… どこかに答えがあるはずだ……」

研究開発室の空気は、昨日の疲労と今日の焦りが混ざり合い、重く沈んでいた。だが、午前中いっぱい、3人は頭と手を動かし続けた。

◆ あかりから小包が届く
昼休みが終わり、社員たちがそれぞれの部署へ戻り始めたころ、アストレア楽器の受付に一つの小包が届いた。差出人は、水瀬あかりであった。

受付の女性社員は、小包を両手で抱えながら社長室へ向かった。ノックをすると、すぐに「どうぞ」という声が返ってきた。
「社長、小包が届いております。水瀬さんからのようです」

天野社長は驚いた。
「……ありがとう。…もらいます」
そう言って、両手で大切そうに受け取った。
(……水瀬さんから…… …何だろう…)

女性社員が退室すると、天野社長は小包をしばらく見つめてから、ゆっくりと開封した。中には、2つの装置と手紙が入っていた。

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天野社長

研究開発部の皆さまの作業が、より円滑に進むように、PhytoCore と LifeSignal Generator -mini (LSG-mini)をお送りします。研究室内に常設してご使用ください。

PhytoCore は、森林が放つフィトンチッドを再構成して、それを放散する装置です。スイッチを入れると、数分後には研究室内が森林の空気になります。円筒形の筐体の下部に小型のタンクが入っていて、そこに原料が入っています。この原料は、私が厳選したもので、嗅覚を通じて脳の辺縁系に作用し、自律神経の適正化、情緒の安定、ストレス低減、認知機能の向上を果たします。

LifeSignal Generator -mini(LSG-mini)は、生命信号を発生する装置です。これは、自然界が発する超高周波成分のうち、生命活動に重要な信号を基礎データとし、それを装置内で目的に合わせて種々に組み合わせ、増幅して放射する装置です。スイッチは入れっぱなしで結構です。赤色のインジケーターが点灯したときにはUSB経由で充電してください。これが発する生命信号が、体の表面から脳の全域にわたって作用し、脳が本来持つ様々な処理能力を引き出します。

これらの装置を研究室内で作動させておくことによって、皆さまの能力が確実に向上します。では、育脳エフェクターの完成、楽しみにしています。

水瀬あかり

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(……これは、すぐに持って行かなければ……)
天野社長は、2つの装置と手紙を小包の箱に戻し、両手でしっかり持って研究開発室へ向かった。研究開発室のドアをノックすると、中から「どうぞ」という、少し元気の無さそうな声が聞こえた。

天野社長がドアを開けると、山本、中村、大野の3人が、驚いたように振り向いた。
「…あっ、社長!」

「今日も頑張ってるね。水瀬さんから、これが届いたよ」

3人は目を丸くした。そもそも、何らかの届け物があれば、社員の誰かが持ってくるはずであり、社長が自ら持ってくることは異例だったからだ。

3人は思った。
(……社長が持ってくるなんて… …よほど急ぐものか、よほど大切なものだ…)
(……すごく大切そうに持っている… 一体、何が入ってるんだ…)
(……社長の表情… なんか… 凄く嬉しそう…)

天野社長は、その小包の箱を机の上に置き、添えてあった手紙を、声を出して読み始めた。
『研究開発部の皆さまの作業が、より円滑に進むように、PhytoCore と LifeSignal Generator -mini (LSG-mini)をお送りします。……<中略>……これらの装置を研究室内で作動させておくことによって、皆さまの能力が確実に向上します。では、育脳エフェクターの完成、楽しみにしています。水瀬あかり』

3人は、思わず小包の箱の中に視線を向けた。

◆ 研究者の目から見たPhytoCore と LSG-mini
「2種類あるんだけど、どこに置こうか…」
天野社長がそう言うと、山本は慌てて目の前に広げていた図面を横にずらせ、置くスペースを確保した。

天野社長は、円筒形の装置、小さな角型の装置の順に、箱から取り出して机上の空きスペースに置いた。

円筒形の装置は、ボディの下部に小さな文字で「PhytoCore」と書かれていた。直径10cm、高さ12cmほどの白い円筒形のボディの上部に、長さ1.5㎝、幅0.5cmほどのスリットが沢山並んでいた。下の方には白く光るパイロットランプと、その反対側には小さなスイッチと給電端子が付いていた。

小さな角型の装置は、ボディ正面下部に小さな文字で「LifeSignal Generator -mini 」と書かれていた。9cm × 6.5cm × 3cm ほどの白っぽい小さなボディの前面には、5.5cm × 1.5cmほどの黒っぽいディスプレー部と、その横に円形のスイッチがあった。ボディ後面には、小さな入出力端子が設けられていた。また、ボディの底面は、その面積の半分ぐらいが微細なスリットで覆われていた。

3人の目は、その2つの装置にくぎ付けとなった。
山本が口火を切った。
「この、円筒形のものから、スイッチを入れてみましょう!」

◆ PhytoCore のスイッチが入る
天野社長も、興味津々に注目するなか、中村が PhytoCore のスイッチを入れた。スイッチが入ると、正面下部の白色のパイロットランプが点灯した。10秒間ぐらいは、何の変化も無かったが、その後、上部に設けられたスリットから、緩やかに風のようなものが出てきた。

中村が、その緩やかな風が当たる近くまで顔を近づけた。
「……なんか… 空気が…… …あっ、森に居る感じの香りがする…」

山本も同じように、風が当たる近くまで顔を近づけた。
「……ほんとだ…  これ…… 森の香り」

大野も、天野社長も、装置に近寄った。
「…はい、森の香りしますね」
「…うん、そうだね。かなり爽やか…」

30秒ほど経った頃、スリットから出る風が強くなった。
4人は驚いた。
「これ、風量なんかも、自動制御されてるっぽいですね…」
「わー 凄い!! 部屋中に行き渡りそう」

大野は、思わず椅子から少し立ち上がって、両手を広げた。
「……部屋中の空気が…… 変わってる……」

4人は、目を丸くして、互いに顔を見合わせた。言葉を探しているようだったが、どの言葉も、この変化を十分に表せないように思えた。

山本が深呼吸した。
「……頭の中が…… すっとする感じがする……」

中村は、顔を少し上に向けて目を閉じた。
「……なんか…… 落ち着きます…… 頭も体も、軽くなった感じがします」

天野社長は、その様子を見ながら、小さく頷いた。
「……水瀬さんは…本当に…… すごいな……」

4人は、その心地良さのあまり、しばらくの間、目をつむって静かに深呼吸していた。
山本にとっては、一昨日の午後から始まった、先の見えない格闘による心身の疲労が大きかったが、その疲労感が急速に解消されていった。

やがて、天野社長が言った。
「ほら、もう一つの装置あるじゃない。あれもスイッチ入れなきゃ…」

◆ LSG-mini のスイッチが入る
今度は、大野が、小さな角型の装置──LSG-mini にそっと指を伸ばし、円形のスイッチを押した。
正面に設けてある小さなディスプレーに、青色の光が灯った。

4人は注目した。
(……何が起こる?)
(……どうなる?)

見た目は、ディスプレーに青色の光が灯っただけであった。

大野が顔を近づけてみた。
「…ん? …あれ?  ちょっと聞こえる感じがします。ただ、めっちゃ高い音です」

山本が顔を近づけた。
「……そお? ………何も聞こええないけど…」

中村が、閃いたように言った。
「水瀬さんのお手紙にあったように、これ、生命信号が出てるんですよ。しかも、超高周波が… だから聞こえないんですよ」

山本は頷いた。
「なるほど… コウモリとか、イルカとかだったら聞こえるのか…。あっ、大野君にもちょっと聞こえるということだ…」

社長が苦笑しながら言った。
「私や山本さんには聞こえないってことですね。でも、なんか、体が軽くなってきた感じがするし、こうやって立っていても、安定してきた感じがするよ」

山本は、机の上の図面を見ながら、驚いたように言った。
「……図面上の線が……この至近距離からでも、くっきり見える!! ええっ!? どういうことだ…」

中村が答えた。
「部長は、少し老眼の傾向があって、この装置によって毛様体筋の収縮力が高まったんですよ、きっと…」

大野は、別のことで驚いていた。
「なんか、頭が凄くすっきりしてきました。最初に点けた PhytoCore の効果も重なってるんでしょうけど… …頭の回転が速くなったような…」

天野社長がにこやかな笑顔で言った。
「それはいいことだ。皆さんの頭の回転が更に速まれば、育脳エフェクターの完成時期もずいぶんと早まることでしょう」

山本も、中村も、同じことを言った。
「私も、そんな感じがします。なんか、けっこう冴えてきたような感じがします」
「自分も同じです。水瀬さんのお言葉、もう一度聞き直したいです。午前中まで理解できなかったことも、今なら理解できそうな気がします」

天野社長は、3人の言葉を聞いて、思わず呟いた。
「……水瀬さんは…… 本当に…… とんでもないものを作るな……」

山本は、LSG-mini を見つめながら、しみじみと言った。
「……これが… 生命信号…… 現代人の生活に欠けているもの… もちろん、この研究室内には騒音やノイズはあっても、生命信号と呼べるようなものは皆無だ。こんな環境では、水瀬さんの言葉が理解できるはずもない……」

大野が別のことに気づいた。
「水瀬さんのボイスレコーダーの中に、『7つの処理のうち、まずは、次の3つから始めてください。これらは、既に開発済みのLifeSignal Generator、略してLSG、に搭載している基盤技術ですので、応用が利きます』ってありましたよね。これ、-miniって書いてますけど、これにも搭載されてるのかも…」

山本は想像を膨らませた。
「…ということは、今取り組んでる3つの処理を私たちが習得できたら、このような凄い装置も作れるようになるかもしれないね…」

天野社長が笑顔で言った。
「それは凄いことだ。当社は育脳分野で最先端に行けるかもしれないね。……じゃ、私は部屋に戻りますが… 皆さん。これで行けそうですね!」

研究開発部の3人は大きく頷いた。
そして、山本が言った。
「はい。少なくとも、午前中までの自分たちとは、ぜんぜん違う気がします。任せてください!!」

その言葉は力強かった。決して大げさなことは言わない山本だからこそ、その言葉は天野社長に強く響いた。

★ 解説コラム――研究開発室に足りない条件
研究開発室という場所は、高度な思考や集中力を必要とするにもかかわらず、大抵の場合、その環境は脳にとって不適切である。なぜなら、自然環境とは対極にある人工環境だからである。
床や壁や天井の材料として一般的に重視されていることは、耐火性、耐薬品性、防塵防黴性、防帯電性、易清掃性などであり、それを実現するための特殊な樹脂、金属、石膏ボード、モルタルなどが主となっている。
また、照明は波長の偏ったLED、空気は空調機を通ったもの、音はあったとしても機器類が出す騒音、その他、乱れた電磁場が存在している。

そもそも、ヒトの脳は、大自然の中で発達してきた。そこには、太陽や宇宙から届く粒子や様々な波長の電磁波が存在し、それらが様々なものによって揺らぎを与えられてヒトに照射される。目に入る色は、植物の緑色が多く、その他の色も含めて多彩である。空気中には様々な生物が放出した物質や音波が存在しており、その多くはコミュニケーションに用いられている。それらのものが揃っている環境の中で、それらから直接的および間接的に影響を受けて脳が発達してきた。また、その環境で最もよく働くように適正化されてきた。

上記のような人工環境と自然環境の差は、脳の働きにとって極めて大きなものとなるが、多くの人は、そのことに気づいていない。多くの研究者や技術者は、人工環境下で仕事をしているため、脳の基礎状態が整わない環境で仕事をしていることになる。その結果、理解が遅れ、集中が途切れ、疲労が蓄積し、成果が上がらない。

だからこそ、PhytoCore や LSG-mini のような装置が部屋で稼働すると、人工環境に足りていなかった物の何割かが補填されることになる。まだ、この物語には登場していない装置もあるため“何割か”という表現をしたが、これらだけでも脳機能の改善度は著しい。

研究開発部の山本、中村、大野の3人において、それまで理解できなかったものが、これらの装置の稼働によって突然理解できるようになるのは、奇跡でもなんでもない。今後、何日も PhytoCore や LSG-mini を稼働させ続ければ、脳のニューロンに器質的な変化も起こり、潜在能力そのものが高まることになる。開発者である水瀬あかりも、これらを使い始めた佐伯みのりも、その恩恵を大いに受けているのであった。

◆夕方、天野社長が研究開発室を訪れる
夕方、研究開発室のドアが静かに開いた。天野社長だった。
「様子を見に来ました。進捗はどうですか?」

山本、中村、大野の3人は、午前中とは全く違う表情で振り向いた。疲労の影は薄れ、理解が進んだときの爽快感や高揚感が見られた。

山本が、机の上の図面を整えながら言った。
「はい、水瀬さんから説明をいただきました、情動波形の付加、脳波誘導、非可聴音の付加 、この3つは、構造がほぼ理解できました。そして、問題を生じていた部分の図面の修正も出来、次は、これに基づいて試作機を再設定、再調整する段階に入ります」

天野社長は頷いた。
「そうなんですね。今後、残っている4つの処理について進めなければならないですが、おおよその感触はどんな感じですか?」

山本が答えた。
「…そうですね… 残りの4つの処理――超高周波成分の人工生成、予測誤差処理の最適化、倍音構造の再構成、空間波形の生成 ――これらにつきましては、あと数日後にでも水瀬さんから説明をお伺いすれば、それらの図面化に取り掛かれると思います」

天野社長は、静かに頷き、ホワイトボードに予定を書き始めた。
「では、スケジュールを整理しましょう」

◆ スケジュール目標の合意
天野社長は、ホワイトボードに数字を書きながら言った。
「まず、数日後に、水瀬さんから残り4つの処理の説明を受ける」

山本が頷いた。
「はい。それで行けると思います。難易度は、今やっているものよりも高いと思いますが、図面化と試作機での動作確認も含めて、15~20日ほどあれば、何とか目処が立ちそうな気がします」

天野社長が答えた。
「実働日数が20日であれば、約1か月ですよね。…ということは、来月の今頃には、“育脳エフェクター”としての具体的な仕様検討にも取り掛かれる可能性がありますね…」

「はい。できる限り、完成度の高いものを短期間で設計したいと思います」

「ところで、山本さん。育脳エフェクターの量産や、超高周波音を扱えるアンプ部分はどうしましょうね…」

山本は、図面を軽く整えながら答えた。
「量産につきましては、当社が現在取り扱っているエフェクターを製造している各社に、外装や電源、筐体などの周辺部分をお願いできると思います。ただし、中核となる7つの処理につきましては、こちらで設計したものをそのまま組み込んでもらう形になります」

天野社長は頷いた。
「なるほど。アンプ部分は?」

「アンプは、超高周波音を扱わなければなりませんので、広帯域アンプを扱う専門メーカーに依頼するのが良いと思います。仕様はこちらで提示しますので、共同で設計してもらう形になります」

天野社長は、ホワイトボードの予定を見直しながら言った。
「では、来月の今頃には、育脳エフェクターの仕様検討に入れるように進めましょう。よろしくお願いします」

「承知しました。必ず仕上げます」

アストレア楽器の研究開発室は、当面の目標と役割分担が定まり、着実に“育脳エフェクター”の開発の階段を上り始めた。

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